③2007年(勝ち馬デアリングハート)
1992年に府中牝馬ステークスとなって以降、唯一このレースを連覇した馬がいた。それがデアリングハートであった。
デアリングハートは世代で言うと、ラインクラフトやシーザリオ、エアメサイアと同じ世代。桜花賞では上位2頭に肉薄した上、エアメサイアに先着して3着に入り、NHKマイルカップでは牡馬相手に2着。3歳時から世代のトップクラスと互角に戦ってきた馬であった。そして4歳時のクイーンステークスで重賞初制覇。そして勢いそのままに、府中牝馬ステークスも勝利して重賞連勝を飾った。
しかしその後は、G1ヴィクトリアマイルでの3着はあったものの、1年間未勝利。前年覇者として臨んだクイーンステークスでも7着に敗れて迎える、2度目の府中牝馬ステークスであった。
1番人気はアサヒライジング。直前のクイーンステークスで重賞初制覇を飾った4歳馬で、まさに前年のデアリングハートと同じような軌跡を辿っていた。2番人気も4歳馬のアドマイヤキッス。重賞3勝の実績を持ち、同年の安田記念では牡馬相手に4着に健闘していた。
3番人気はデアリングハートと同じ5歳馬のディアデラノビア。夏のアメリカ遠征から帰国初戦を迎えていた。この3頭が上位人気を占め、ディフェンディングチャンピオンのデアリングハートは4番人気となっていた。
レースはユキノマーメイドがハナを切り、前半1000mは59秒3と平均やや遅めのペースで通過。アサヒライジングが好位からレースを進め、その直後にデアリングハート。ディアデラノビアとアドマイヤキッスは中団からの競馬となった。
そのままの隊列で4角を回り、最後の直線へ。残り400mでアサヒライジングが先頭に立ち、連れるようにその外をデアリングハートも伸びる。その直後に内からディアデラノビア、外からアドマイヤキッスが迫り、上位人気の馬たちの争いに。
残り150mでアサヒライジングを交わしたデアリングハートがそのまま押し切り勝利。2着には先に抜け出したアサヒライジングが粘り、最後に伸びてきたアドマイヤキッスが3着に入った。
デアリングハートはその後、ダートにも挑戦したが、勝利は挙げられずに現役引退となった。しかし、引退後は繁殖牝馬となり、産駒のデアリングバードがデアリングタクトを輩出。自身には縁のなかった牝馬三冠を、孫娘が無敗で制覇してみせた。