②1998年(勝ち馬メジロドーベル)
ノースフライトの格上挑戦Vから5年が経った1998年。この年の勝ち馬メジロドーベルは、50キロで勝利したノースフライトと好対照となる58キロを背負っての勝利であった。この時5歳(現4歳)であったメジロドーベルは、オークスと秋華賞を勝っている前年の二冠馬であり、3歳時には阪神3歳牝馬ステークスも勝利していた。
秋華賞勝利後は牡馬の一線級との戦いを続けており、宝塚記念ではサイレンススズカやステイゴールドなど、そうそうたるメンバー相手に5着と健闘。G1タイトルを3つ持っている実績はここでは断然で、1年ぶりとなる牝馬限定戦であれば、負けられないといったところであった。
戦前の評価もやはりメジロドーベル中心。単勝1.7倍の1番人気に推されていた。2番人気は、直前のチャレンジカップを牡馬相手に勝利したランフォザドリーム。3番人気は、条件戦を連勝して勢いに乗るグレースアドマイヤであった。この2頭は別定55キロの斤量で、メジロドーベルの58キロとは3キロの差があった。
レースはエステーサッチの逃げとなり、前半1000mの通過は61秒0というスローペースで進む。ランフォザドリームが好位につけ、そのすぐ外をぴったりマークするようにメジロドーベルが並び、グレースアドマイヤは中団のインコースでじっくり脚をためていた。
4角手前で最初に動いたのはメジロドーベル。外々を回ってランフォザドリームを交わし、2番手まで上がって直線に向かう。そして最後の直線では、400mを残して先頭に立つ。
しかしその直後に影のようについてきていた馬がいた。それがグレースアドマイヤであった。中団のインにいたはずのグレースアドマイヤは、メジロドーベルが早めに仕掛けたとき、それに呼応するようにその外に出し、すぐ後ろまで来ていた。
残り200mからは馬群から抜け出した2頭の一騎打ち。逃げるメジロドーベルに追うグレースアドマイヤ。3キロの斤量差もあり、1完歩ずつに差は縮まる。最後は並んだかに見えたが、ハナ差しのいだメジロドーベルが1着。少し離れた3番手には後方から追い込んだウェディングハニーが入った。
G1馬の意地を見せたメジロドーベルだったが、それをギリギリまで追い詰めたグレースアドマイヤも、条件戦を勝ったばかりとは思えない走りであった。
秋の始動戦を勝利で飾ったメジロドーベルはその後、直後のエリザベス女王杯も勝利。翌年にはエリザベス女王杯の連覇も飾り、獲得したG1タイトルは5つ。まさに名牝と呼ぶにふさわしい活躍を見せた。