メジロドーベル、デアリングハートなど 秋の女王を目指す名牝たちの一戦【府中牝馬S5選】
府中牝馬ステークスは、1953年創設の東京牝馬特別を前身とする牝馬限定の重賞で、最も長い歴史を持つ。現在はエリザベス女王杯への重要なステップレースとして位置付けられ、秋の女王を目指す精鋭牝馬たちが府中に集結する。この記事では、その歴史に刻まれた5つの印象的なレースを振り返る。
①1993年(勝ち馬ノースフライト)
まだ府中牝馬ステークスが1600mで行われていた1993年。このレースをステップとして、後のG1制覇に繋げた馬がいた。それがノースフライトだ。
ノースフライトは4歳(現3歳)の5月にデビュー。同期はすでに春のクラシックに出走している時期で遅めのデビューとなったが、その牡馬混合の初戦を9馬身差の圧勝で飾る。2戦目となる500万下(現1勝クラス)でも、今度は古馬を相手に8馬身差の圧勝を果たした。
しかし、次の単勝1.2倍に推された900万下(現2勝クラス)のレースでは、5着同着に敗退した。これまでの圧勝が嘘のように、まさかの足踏みを喫したノースフライトが次走に選択したのが、府中牝馬ステークスであった。
まだ900万下の身で、2階級の格上挑戦という形ではあったが、デビューからの連勝で素質を評価され、単勝人気は4番人気となった。
1番人気は前走の京王杯オータムハンデ(現京成杯AH)で牡馬相手に3着だったウェディングケーキ。2番人気は前年の府中牝馬ステークスとエリザベス女王杯で2着に入っているメジロカンムリ。3番人気に阪急杯勝ち馬のレガシーフィールドが続いていたが、3頭のオッズは4〜5倍台で拮抗しており、4番人気のノースフライトも7.0倍と混戦模様であった。
レースはサクラミライがハナを切るも、その内からホッカイセレスが並びかけ、2頭が並走の形で集団を引っ張る形。出負けしたノースフライトだったが、引っ掛かり気味に上がっていき、3番手に収まる。ノースフライトの直後の内にウェディングケーキ、外にメジロカンムリが続き、レガシーフィールドは後方からの競馬となる。
そのまま4角を回って直線に向くと、直線は内外に大きく広がっての追い比べ。残り300mで前の2頭を交わしたノースフライトが先頭に立つ。
好位にいたウェディングケーキ、メジロカンムリは伸びを欠き、後方から進路を切り替えながら伸びてきたレガシーフィールドも間に合わず、ノースフライトが早め先頭から押し切った。馬群を縫って伸びてきたパーシャンスポットが2着、好位からしぶとく伸びたブランドノーブルが3着となった。
格上挑戦で重賞初制覇を飾ったノースフライトは、続くエリザベス女王杯でも2着に好走。翌年は牡馬相手にマイルG1のタイトルを2つ獲得した。ノースフライトはまさに、このレースから飛躍した「マイルの女王」であった。