アーモンドアイやジェンティルドンナなど! 競馬史に名を刻む馬が彩った秋の淀【秋華賞 名勝負5選②】
3歳牝馬の三冠最終戦の秋華賞は、エリザベス女王杯が古馬混合レースとなった1996年に新設されたG1。内回り2000mという特殊な条件から、展開次第では波乱が生じることも多いレースだ。後編では、アーモンドアイやジェンティルドンナが活躍した、2008年~2020年の名勝負5つをピックアップして紹介する。
⑥2008年(勝ち馬ブラックエンブレム)
前半では波乱の秋華賞となった1999年と2000年を紹介した。だが、当時はまだ最高配当となる賭け式が馬連の時代のため、2000年が3万円強、1999年が10万円弱という配当であった。
これも十分波乱といえる配当であるが、それから10年近く経った2008年。すでに3連単が導入されていたこの年は文字通り、桁違いの配当が飛び出すことになる。その波乱の立役者は、単勝11番人気で勝利したブラックエンブレムであった。
この年は春のクラシックから一筋縄ではいかないレースが続いていた。桜花賞は単勝12番人気のレジネッタが勝利。12番人気→15番人気→5番人気の順で、3連単の配当は700万円を超えた。
そしてオークスでは、桜花賞で1番人気を裏切ったトールポピーが勝利した。4番人気→13番人気→5番人気の順で入線し、桜花賞ほどではないものの、3連単は44万超えの払い戻しとなった。
そして迎えた秋華賞。単勝1番人気はオークス馬トールポピー。桜花賞馬レジネッタが僅差の2番人気で続き、単勝オッズ10倍を切るのは2頭のみで、混戦ながらも2強対決のような人気となっていた。
レースはエアパスカルがハナを切るも、向正面で先頭が入れ替わり、残り1200mからはプロヴィナージュが先頭を走る展開となった。前半の1000m通過は58秒6と、やや速めのペースで流れる。トールポピーは中団、レジネッタは後方寄りから競馬を進めた。
そのまま4角を回り、最後の直線へと向かう。直線に向いても先頭はプロヴィナージュ。外に持ち出した人気馬たちが伸びあぐねる中、後続に3馬身の差をつけて粘り込みを図る。しかし、内にこだわった進路取りでその背後に迫る馬がいた。それがブラックエンブレムであった。
中団追走から内を立ち回って浮上してきたブラックエンブレムは、逃げるプロヴィナージュの外に持ち出すと、1完歩ごとに差を詰める。残り50mで先頭に立つと、外を伸びたムードインディゴの追撃を抑えて勝利した。
2着に8番人気のムードインディゴ、3着には単勝16番人気のプロヴィナージュが粘り込み、3連単の配当は1098万超の大波乱。G1では史上初となる、1000万円超の払い戻しとなった。
ブラックエンブレムはその後、慢性的な鼻出血に悩まされ、海外遠征の1戦を走ったのみで現役を引退となった。しかし引退後は、繁殖牝馬となって重賞馬を輩出。母としても大活躍を果たしている。