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Kawakami Princess
第67回オークスを制したときのカワカミプリンセス

⑤2006年(勝ち馬カワカミプリンセス)

 無敗で秋華賞を制したファインモーション。その4年後の2006年にも、無敗の秋華賞制覇を果たした馬がいた。それがカワカミプリンセスであった。6月生まれと遅生まれだったこともあり、3歳2月という遅いデビューであったカワカミプリンセス。さらにその新馬戦でも単勝9番人気と、あまり評価は高くなかった。

 しかし逃げ切ってデビュー勝ちを収めると、続く君子蘭賞は一転、後方からの追い込みで連勝を飾る。
さらにオークストライアルのスイートピーステークスでは初距離の1800mも問題にせず、無傷の3連勝でオークスへと駒を進めた。

 この年の桜花賞は、キスとキッスのワンツーで決まった年であり、オークスの1番人気は桜花賞2着のアドマイヤキッス。桜花賞馬キストゥヘヴンが2番人気で続き、カワカミプリンセスが3番人気となっていた。

 ここでも勢いの止まらぬカワカミプリンセスは、桜花賞組を一蹴。49年ぶり4頭目の無敗でのオークス馬に輝いた。デビューから3ヶ月足らずでの戴冠は、まさにプリンセスの名の通り、シンデレラストーリーであった。そして、無敗での二冠制覇に向けて挑戦したのが秋華賞。秋のトライアルは使わず、直行での参戦であった。

 1番人気は桜花賞、オークスに続いてアドマイヤキッス。前哨戦のローズステークスを快勝しての出走であった。2番人気はオークス馬カワカミプリンセス、3番人気は桜花賞馬キストゥヘヴンで、オークスとは2.3番人気が入れ替わる形となった。

 レースはトシザサンサンがハナを切り、コイウタとシェルズレイを加えた3頭で後続を引き離す展開。前半1000mは58秒4と前は少し速めのペースで進み、カワカミプリンセスは中団からのレース。その直後にキストゥヘヴン、そのすぐ後ろにアドマイヤキッスが続いていた。

 4角を回って直線を向くときには、前の3頭のリードはなくなり、トシザサンサンとコイウタは失速。変わって先頭に立ったシェルズレイだが、離れた4番手を追走していたアサヒライジングが残り200mで先頭に立つ。しかしそれを目標に伸びたカワカミプリンセスが残り50mできっちり捕えて勝利。2着にアサヒライジングが入り、しぶとく伸びたフサイチパンドラが3着。終わってみれば、オークスの2.3着が入れ替わっただけの結果となった。

 カワカミプリンセスは、ファインモーション以来2頭目となる、無敗での秋華賞制覇を達成。ファインモーションはオークス未出走のため、オークスと秋華賞を無敗で制したのは史上初であった。
その後カワカミプリンセスは、エリザベス女王杯でも1位入線。ファインモーションに続いて無敗のエリザベス女王杯制覇かと思われたが、直線での斜行により12着に降着。

 このレースでデビュー初黒星を喫すると、それ以降はまるでシンデレラの魔法が切れたかのように、現役引退まで一度も勝利することはできなかった。それでも秋華賞までで見せた、他の追随を許さない強さは、ファンの記憶に強く刻み込まれている。

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