HOME » コラム » 5選 » ティコティコタックや三冠牝馬・スティルインラブなど……儚く煌めいた名牝たち【秋華賞 名勝負5選①】 » ページ 4
Still in Love
第8回秋華賞を制したときのスティルインラブ

④2003年(勝ち馬スティルインラブ)

 ファインモーションの衝撃から1年。2003年の秋華賞でついに、17年閉ざされていた歴史の扉が開いた。秋華賞創設以来初の三冠牝馬の誕生である。

 この年も、桜花賞が始まる時点では絶対的な存在はいなかった。桜花賞の単勝1番人気は、武豊騎手騎乗の超良血馬アドマイヤグルーヴ。1600mは未経験であったが、牡馬相手に若葉ステークスを勝ったことが評価されていた。しかし単勝オッズは3.5倍。スティルインラブも、同じ3.5倍の2番人気であった。

 レースは立ち回りに勝るスティルインラブが好位から抜け出して勝利。アドマイヤグルーヴは出遅れから猛然と追い上げたが、3着に終わった。そして続くオークスでは、信じられないことが起きる。単勝1番人気はアドマイヤグルーヴで、そのオッズは1.7倍。2番人気のスティルインラブは5.6倍と、桜花賞では同じだったオッズに大きな差が開いた。

 桜花賞で勝ったにも関わらず、オークスではアドマイヤグルーヴの逆転間違いなしという声が圧倒的であったことをオッズが表していた。しかし結果は、スティルインラブが再び快勝。アドマイヤグルーヴは後方から差を詰めるも、7着に終わった。

 そして秋の始動戦となるローズステークス。ついにスティルインラブがアドマイヤグルーヴを抑えて1番人気の支持を受ける。しかし結果は、アドマイヤグルーヴの5着に敗れた。その結果、牝馬三冠がかかる秋華賞でも、1番人気は再びアドマイヤグルーヴ、対するスティルインラブは2番人気に甘んじた。

 レースはマイネサマンサの逃げで、淀みのない流れ。中団の外めにスティルインラブはつけて、それをぴったりマークするようにアドマイヤグルーヴが続いていた。
3〜4角で、先に促して上がっていったスティルインラブに対して、持ったままで後ろにつけるアドマイヤグルーヴ。そのまま直線に向くと、粘り込みを図るマイネサマンサに、1完歩ずつ迫る上位人気の二頭。粘るマイネサマンサを残り50mで捕えたスティルインラブがアドマイヤグルーヴを振り切って勝利。史上2頭目、三冠目が秋華賞となってからは初となる牝馬三冠を達成した。

 桜花賞やオークスと違い、アドマイヤグルーヴもしっかり力を出し切り、両者がっぷり四つの戦い。さらにはぴったりとマークされながら、それを振り切るというまさに横綱相撲。桜花賞やオークスももちろん強かったが、この秋華賞の勝ち方は、トリプルティアラに相応しいレース内容であった。

 「1番人気はいらない、1着だけ欲しかった」というのは、サニーブライアンに乗っていた大西騎手の言葉だが、三冠全て2番人気で勝利したスティルインラブにも、この言葉がぴったりと当てはまっていた。

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