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Fine Motion
第7回秋華賞を制したときのファインモーション

③2002年(勝ち馬ファインモーション)

 1996年に秋華賞が新設されて以降、2023年までに6頭の三冠牝馬が誕生。しかしその6頭よりも、圧倒的な支持を集めた馬がいた。それが2002年の勝ち馬、ファインモーションである。

 この年は1999年、2000年と比べても混戦の春であった。桜花賞・オークスともにシャイニンルビーが1番人気となったが、単勝オッズはいずれも4倍台。そして桜花賞を制したのは13番人気のアローキャリー、オークスを制したのは4番人気のスマイルトゥモローで、どちらのレースも馬連万馬券という波乱の決着であった。

 一方、オークスが終わった頃、ファインモーションはまだ1勝馬であった。外国産馬でクラシックに出走する権利のないファインモーションは、2歳の12月に新馬戦を楽勝した後に骨折。故障の治癒と成長を促す意味で、放牧に出されていた。

 復帰はオークスが終わって2ヶ月以上が経った3歳の8月。古馬と牡馬相手に500万下(現1勝クラス)、1000万下(現2勝クラス)を連勝。続く秋華賞トライアルのローズステークスも3馬身差で快勝し、デビューから無傷の4戦4勝で秋華賞に駒を進めていた。

 この年の秋華賞は、桜花賞馬アローキャリー、オークス馬スマイルトゥモローともに不在。戦前からファインモーションの1強ムードで、単勝オッズは1.1倍。単勝支持率72.0%というのは、グレード制導入後のG1ではトップ(当時)の数字であった。

 レースはユウキャラットがハナを切り、前半1000mは59秒0の通過。淀みのないペースで流れ、縦長の馬群となった。注目のファインモーションは好位の外を追走。鞍上の武豊騎手は馬の力を信じており、内に詰まって力を発揮できないことだけは避けたいというポジション取りであった。

 残り600mから徐々に前との差を詰めると、4角では既に2番手の外まで浮上。そして最後の直線では、余裕の手ごたえで先頭に並びかける。残り200mで逃げるユウキャラットを捕えると、もつれる2番手争いを尻目に独走のレース。2着サクラヴィクトリアに3馬身半の差をつけて快勝した。

 ファインモーションはその後、古馬相手のエリザベス女王杯も勝利し、デビュー6連勝。年末の有馬記念では、シンボリクリスエス、ジャングルポケット、ナリタトップロードなどの錚々たるメンバーを差し置いて、単勝1番人気の支持を集めた(結果は5着)。波乱を呼んだ武幸四郎騎手、断然人気の支持にきっちり応えた武豊騎手。好対照な兄弟の勝利を取り上げたが、その翌年、秋華賞創設以来初となる三冠牝馬が誕生した。

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