②2000年(勝ち馬ティコティコタック)
ブゼンキャンドルとクロックワークで決まった波乱の秋華賞から1年。2000年の秋華賞こそは本命党歓喜…とはならなかった。波乱を演出したのは、若干21歳の若武者と、900万下(現2勝クラス)を勝ったばかりの伏兵のコンビであった。
この年も前年同様、春のクラシックから確たる主役は不在。桜花賞で支持を集めたのはデビューから無敗の4連勝で臨んできたサイコーキララ。しかし単勝1.8倍の支持に応えられず、4着に敗れる。勝ったのは6番人気の伏兵チアズグレイスであった。
しかし、オークスでも桜花賞馬チアズグレイスは5番人気。桜花賞3着のシルクプリマドンナが1番人気となり、その支持に応えて勝利した。世代の主役に躍り出たかに思われたが、秋初戦のローズステークスで4着に敗戦。勝ったのは500万下(現1勝クラス)を勝ったばかりのニホンピロスワンであった。
このローズステークスの結果によって、秋華賞は再びの混沌の中で行われることとなった。1番人気はシルクプリマドンナだったが、その単勝オッズは4.2倍。チアズグレイスが4.3倍の2番人気で続き、4.8倍の3番人気にニホンピロスワン。拮抗したオッズからも、迷っているファン心理が垣間見えていた。
レースはヤマカツスズランがハナを切り、前半1000mは60秒8という遅めの流れ。2番手にチアズグレイスがつけ、シルクプリマドンナは中団、ニホンピロスワンは後方から競馬を進める。そのまま4角を回り、最後の直線へ向かうと、逃げるヤマカツスズランと良い手ごたえに見えるチアズグレイス。
この2頭の争いかと思われたが、好位のインでじっくり我慢し、間を割るように伸びてきた馬がいた。10番人気の伏兵ティコティコタックであった。追ってから伸びあぐねるチアズグレイスを内から交わし、逃げるヤマカツスズランに外から並びかけると、最後は前をきっちり捕えて勝利した。
2着にヤマカツスズランが粘り込み、3着は勝ち馬と同じく内を立ち回ったトーワトレジャーが入った。チアズグレイスは直線伸びを欠いて4着。シルクプリマドンナとニホンピロスワンは見せ場なく、それぞれ10着と11着に敗れた。
勝ったティコティコタックは、春のクラシックは未出走。前走で900万下を勝ったばかりの、いわゆる夏の上がり馬であった。そして鞍上の武幸四郎騎手はまだデビュー4年目の21歳、嬉しいG1初制覇となった。偉大な父と兄を持つ、まさにジョッキー界のサラブレッドが、大舞台で大きな仕事をやってのけた。