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ティコティコタックや三冠牝馬・スティルインラブなど……儚く煌めいた名牝たち【秋華賞 名勝負5選①】

text by 中西友馬

秋華賞は、3歳牝馬三冠の最終戦であり、内回り2000mという特殊な条件から、展開次第では波乱が生じることも多いレースだ。過去には1999年のブゼンキャンドルや2000年のティコティコタックが波乱を演出し、大きな注目を集めた。本記事では、そんな秋華賞の歴史に残る5つのレースをピックアップし、印象的な勝負の数々を振り返る。

Buzen Candle
第4回秋華賞を制したときのブゼンキャンドル(写真左奥)

①1999年(勝ち馬ブゼンキャンドル)

 まずは創設4年目となる1999年。この年は春のクラシックから混沌としていた。

 桜花賞で人気を集めたのは、デビューから1ヶ月足らずで阪神ジュベナイルフィリーズを制覇した天才少女スティンガー。しかしぶっつけで挑んだ桜花賞で12着に敗れ、制したのはプリモディーネ。2着にフサイチエアデール、3着にトゥザヴィクトリーが入った。しかし桜花賞でフサイチエアデールに騎乗していた武豊騎手が、オークスではトゥザヴィクトリーに騎乗することとなった。その結果、オークスはトゥザヴィクトリーが1番人気を背負った。しかし勝ったのは、7番人気の伏兵ウメノファイバーであった。

 このように、確たる主役不在のまま夏を越し、迎えた秋のローズステークス。春の実績馬トゥザヴィクトリーやフサイチエアデールが出走する中、勝ったのは前走で900万下(現2勝クラス)を勝ったばかりのヒシピナクルであった。

 またもや新星が現れたという状況で、秋華賞を迎えていた。1番人気は武豊騎手騎乗のトゥザヴィクトリーで、2番人気はローズステークス覇者ヒシピナクル。3番人気に桜花賞2着のフサイチエアデールが続き、ぶっつけで挑んだオークス覇者のウメノファイバーは4番人気であった。

 レースはエイシンルーデンスがハナを切り、トゥザヴィクトリーが2番手を追走。ヒシピナクルとフサイチエアデールは中団から、ウメノファイバーは後方から競馬を進める。1000m通過は58秒4と速めの流れだったにも関わらず、1番人気のトゥザヴィクトリーが2番手につけていたため、有力馬たちが3角から早めに動き出す。4角では2番手のトゥザヴィクトリーの外にヒシピナクル、内にフサイチエアデール、ウメノファイバーも連れてその直後まで上がってきていた。

 そのまま直線を迎え、トゥザヴィクトリーは失速した。代わって抜け出したヒシピナクルをフサイチエアデールとウメノファイバーが追う形となったが、その外からまとめて差し切ったのは、後方で脚を溜めていたブゼンキャンドル。連れて伸びてきた、最後方待機のクロックワークが2着に浮上してゴール。ブゼンキャンドル、クロックワークともに500万下(現1勝クラス)勝ちしかなく、ともにトライアル3着で出走権を獲得した馬同士の決着であった。

 さらにブゼンキャンドルが単勝12番人気、クロックワークが単勝10番人気という人気薄で、馬連は10万円近い配当がつき、波乱の秋華賞となった。ブゼンキャンドルはその後、障害レースにも挑戦したが、平地のレースでは勝利どころか8戦して全て2桁着順に沈んだ。秋華賞は、まさに一世一代の大駆けであった。

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