スペシャルウィーク ~レジェンド・武豊をダービージョッキーに導いた黄金世代の総大将~
スペシャルウィーク(Special Week)
レジェンド・武豊騎手をダービージョッキーに導いた馬。それがスペシャルウィークだ。「1998年クラシック世代」の筆頭株として、ジャパンカップでの凱旋門賞馬モンジュー撃破など、その戦績はまさに“主人公”のようだった。スペシャルウィークの輝かしい軌跡を辿る。
父 | サンデーサイレンス |
母 | キャンペンガール |
生年月日 | 1995年5月2日 |
馬主 | 臼田浩義 |
調教師 | 白井寿昭 |
生産者 | 日高大洋牧場 |
通算成績 | 17戦10勝【10-4-2-1】 |
獲得賞金 | 10億9262万3000円 |
主な勝ち鞍 |
1999年 日本ダービー 1999年 天皇賞(春) 1999年 天皇賞(秋) 1999年 ジャパンカップ |
受賞歴 | 1999年 JRA賞特別賞 |
産駒成績 | 産駒デビュー年:2003年 |
通算重賞勝利数:35勝 | |
通算G1勝利数:8勝 | |
代表産駒(主な勝ち鞍) |
シーザリオ(2005年 優駿牝馬) ブエナビスタ(2011年 ジャパンカップ) トーホウジャッカル(2014年 菊花賞) |
黄金世代を象徴する“記憶に残る”名馬
「黄金世代」と呼ばれた95年生まれの代表的な一頭であったスペシャルウィーク。日本の名手をダービージョッキーに導き、ジャパンカップに参戦した凱旋門賞馬を「日本総大将」という立場で下すなど勝負強さが光った。
デビュー前から評判だったスペシャルウィークは順調にレースで好成績を残し、3戦目できさらぎ賞に挑戦し、重賞初制覇を飾る。続く弥生賞では、後にライバル関係となるセイウンスカイや良血馬キングヘイローと初顔合わせとなる。レースでは逃げるセイウンスカイをゴール前で見事に捉えて勝利し、クラシックの有力馬として皐月賞に駒を進める。
初めてのGⅠ挑戦となった皐月賞では1番人気に推されるも内が有利とされるいわゆるグリーンベルトという状態のなか、大外枠となったスペシャルウィークは後方からの競馬を余儀なくされる。
一方、内枠を引いたライバルのセイウンスカイはストレスなく先行することに成功する。直線で先頭に立ったセイウンスカイを懸命に追いかけるも、3着になるのが精一杯であった。
ライバルに一泡吹かされた皐月賞だったが、1か月後の日本ダービーでも1番人気に支持され、見事その人気に応えることになる。直線で加速すると他馬を一切寄せ付けず、最後は5馬身差をつける圧勝。そしてこの勝利は武豊にダービージョッキーという勲章をもたらすファンの記憶に残るレースとなったのだ。
休み明けの京都新聞杯ではキングヘイローを下し、菊花賞へ順調に駒を進めた。日本ダービーでとてつもない強さを見せたスペシャルウィークは、単勝1.5倍という圧倒的な支持を受ける。しかし、レースではハイペースで逃げたセイウンスカイが当時の世界レコードで駆け抜けた。スペシャルウィークは上がり最速の脚を使うも2着におわる。
ライバル達としのぎを削ったクラシック戦線だったが、同世代には他にも強豪が存在した。当時は外国産馬がクラシックに出られないという規定があり、グラスワンダーとエルコンドルパサーという怪物が出走していなかったのだ。そのエルコンドルパサーと対決する機会はすぐに訪れる。
ジャパンカップでは、5戦連続の1番人気を得たスペシャルウィークであったが、勝者はエルコンドルパサーだった。後に世界で活躍することになるエルコンドルパサーの走りの前に屈服するかたちとなった。
古馬になったスペシャルウィークはAJCC、阪神大賞典と1着で駆け抜け、満を持して天皇賞(春)に出走する。ライバルのセイウンスカイや前年の覇者メジロブライトを蹴散らし、堂々と復活を遂げた。
抜群の安定感を見せるスペシャルウィークは春のグランプリである宝塚記念に出走する。ここでも単勝1.5倍で1番人気の指示を受け圧勝するかと思われたが、またも同世代のライバルが立ち塞がる。グラスワンダーだ。直線で先に抜け出したスペシャルウィークであったが、後ろから虎視眈々とマークしていたグラスワンダーにあっさりと差されてしまう。3馬身差をつけられる完敗であったが、3着のステイゴールドとは遙か後ろの7馬身差なので、世代レベルの高さを印象づけるレースであった。
秋の初戦、京都大賞典に圧倒的1番人気で出走するも、過去最高体重が影響してか、まさかの7着というキャリア唯一の大敗を喫することになる。その結果、天皇賞(秋)では4番人気に甘んじる。宝塚記念と京都大賞典の結果で、スペシャルウィークの能力が疑問視されはじめたからである。しかし、スペシャルウィークは強かった。直線で大外から他馬を撫で斬る末脚を使い、レースレコードで走り切り、天皇賞の春秋制覇の偉業を成し遂げる。
続くジャパンカップでは黒船がやってくる。凱旋門馬モンジューである。モンジューは、エルコンドルパサーが2着となった凱旋門賞で優勝し、ジャパンカップに参戦してきた。オッズはモンジューが1番人気、スペシャルウィークが2番人気とオッズ面では後塵を拝した。しかしレースでは、最後の直線で一早く先頭に立ち、モンジューはじめ他の外国馬を寄せ付けず1着でゴールする。スペシャルウィークが日本総大将と呼ばれるゆえんがここにある。
最後のレースとなった有馬記念では宝塚記念で敗れたグラスワンダーとの再戦となった。最後の直線で前を走るグラスワンダーをゴール前で僅かな差で捉えたかのように見え、武豊も勝ちを確信してウイニングランを行っていた。しかし、写真判定の結果は4cmの差でグラスワンダーが先にゴールしていた。2500m走った末に4cm差で決着する、競馬という競技の奥深さを感じさせるレースであった。
引退したスペシャルウィークは社台スタリオンステーションで種牡馬となり、ブエナビスタやシーザリオといった一流牝馬を生み出した。また母の父としてもエピファネイアやサートゥルナーリアなどの活躍馬を輩出している。リーチザクラウンやトーホウジャッカルが種牡馬入りをしており、スペシャルウィークの血が繋がれていくのを期待せざるにはいられない。
【了】
(文●沼崎英斗)