
人馬の呼吸が重要とされる競馬において、乗り替わりは必ずしもプラスとは限らない。とりわけ、これまで一度も騎乗経験のない騎手が初めて手綱を取る、いわゆる「テン乗り」の場合、マイナス要因となることも多い。
だが、その条件でG1制覇を成し遂げた騎手と馬も存在する。今回は、テン乗りでG1を制したコンビを5つ紹介する。[4/5ページ]
④池添謙一&インディチャンプ
■2019年マイルチャンピオンシップ
2019年の安田記念、勝てばG1・6勝目となるアーモンドアイを破ってG1初勝利を挙げたのは、同馬主のインディチャンプだった。ライバルに不利があったとはいえ、当時の現役最強馬を破っての1着だったこともあり、勝利の直後から春秋マイルG1制覇を期待する声も上がっていた。
だが、秋の復帰戦となった毎日王冠では、一旦先頭に立つも粘り切れず3着。さらに本番のマイルチャンピオンシップでは、主戦の福永祐一騎手が騎乗停止により池添謙一騎手に乗り替わりとなった。
臨戦過程の不満と、主戦を欠いたという不安もあってか、春のマイル王者ながら評価は3番人気でレースを迎えていた。
しかし、いざレースに行くと、これまであまり発馬が上手でなかったインディチャンプがまるで別馬のようにポンと好スタートを決め、すんなり好位に取りついていった。
そのまま逃げた馬たちの直後につけると、直線では持ったままの手応えで外にいるダノンプレミアムへ並びかけた。
それでも池添騎手はすぐに追わない。直線で気を抜く悪癖を出すのを防ぐため、ギリギリまで待ってから相棒にGOサインを出した。
その合図を待っていましたとばかりにインディチャンプは脚を伸ばすと、一気にギアを数段上げて抜け出す。そのままライバルたちを置き去りにして、史上10頭目となる春秋マイル制覇を達成した。
レース後、池添騎手は「祐一さんからソラを使う馬というのは聞いていたので、それを頭に入れながら乗った」とコメント。
いきなりの騎乗、しかもG1という大舞台でいとも簡単にその癖を出さないよう乗り、最高の結果を出せるというのは、やはりトップジョッキーたるゆえんだろう。このあたりに、彼が「仕事人」といわれる理由が詰まっていそうだ。


