
人馬の呼吸が重要とされる競馬において、乗り替わりは必ずしもプラスとは限らない。とりわけ、これまで一度も騎乗経験のない騎手が初めて手綱を取る、いわゆる「テン乗り」の場合、マイナス要因となることも多い。
だが、その条件でG1制覇を成し遂げた騎手と馬も存在する。今回は、テン乗りでG1を制したコンビを5つ紹介する。[3/5ページ]
③M.デムーロ&サンビスタ
■2015年チャンピオンズカップ
2000年、「ダートでもジャパンカップに並ぶ国際競走を」という理念のもとに創設されたジャパンカップダート。2014年にチャンピオンズカップへと改称され、舞台も中京競馬場へ移された。
そして2026年1月現在、このレースを牝馬で制した馬は、2頭しか存在しない。そのうちの1頭がサンビスタである。
デビューは3歳の3月31日とかなり遅かったサンビスタだが、地道に力を付け、5歳の11月にはJBCレディスクラシックでG1級競走初制覇を挙げるまでの成長を見せた。
だが、牝馬限定戦では強さを見せていても、牡馬の壁が芝以上に高いのがダート界。フェブラリーステークスや東京大賞典、帝王賞といったレースを牝馬で制した馬は数えるほどしかいなく、実力差に跳ね返されてきた馬は多い。
当然サンビスタも例外ではなく、余勢を駆って臨んだ1度目のチャンピオンズカップでは4着。好走はしたが、勝ったホッコータルマエからは3と3分の1馬身をつけられており、完敗ともいえる内容だった。
そして翌年、フェブラリーステークスではさらに着順を下げて7着となっていたことからも、やはり牡馬相手では分が悪いと思ったファンも少なくなかっただろう。
その後、牝馬限定の交流重賞では馬券圏内を外さない安定感を見せながらも、暮れに再び出走したチャンピオンズカップでは12番人気という伏兵扱いだったことが、その事実を物語っている。
だが、このレースでテン乗りとなった鞍上のミルコ・デムーロ騎手はレース後「なんでこの馬が12番人気なのかと思った」と語っていたように、調教で跨った時から相棒の実力には自信を持っていたという。
ゲートが開くと中団から進め、勝負所でじわじわと進出。直線で外に持ち出すとそこからグイグイと脚を伸ばし、先頭に立っていたホッコータルマエを一気に捉える。
抜け出してからはややソラを使うようなところも見せていたが、鞍上の叱咤激励に応えて末脚を緩めることなく、そのまま先頭でゴール坂を駆け抜けた。
この勝利をのちにミルコ騎手は「すべてが完璧だったから勝てたと思う。少しでもうまくいかないことがあると、どんなに強い馬でもハナ差で負けるのが競馬。そういう意味では運がすごく良かった」と振り返っている。
これだけ強い馬のラストランにテン乗りで巡り合えたのもまた、ミルコ騎手の運だったのではないのだろうか。


