
人馬の呼吸が重要とされる競馬において、乗り替わりは必ずしもプラスとは限らない。とりわけ、これまで一度も騎乗経験のない騎手が初めて手綱を取る、いわゆる「テン乗り」の場合、マイナス要因となることも多い。
だが、その条件でG1制覇を成し遂げた騎手と馬も存在する。今回は、テン乗りでG1を制したコンビを5つ紹介する。[2/5ページ]
②C.デムーロ&アユサン
■2013年桜花賞
蛯名正義騎手を背に新馬戦でデビュー勝ちを飾ったアユサンはレース後、鞍上に「ムチャクチャ走る」と絶賛されたという。
その期待通り、次走の新設重賞アルテミスステークスでは2着となり、しっかり賞金を加算。暮れの阪神ジュベナイルフィリーズこそ4着と敗れたものの、トライアルのチューリップ賞では3着となり、桜花賞に駒を進めた。
桜花賞では、栗東滞在の効果もあり、抜群といえる仕上がりだった。しかし、レース前日にここまで手綱を取っていた丸山元気騎手が落馬負傷。急遽、短期免許で来日していたクリスチャン・デムーロ騎手に白羽の矢が立った。
状態は良くとも、ここまで重賞勝利がなく、急遽の乗り変わりで初コンビということもあり、アユサンは当日7番人気の評価だった。
昨今の競馬界であればクリスチャン効果でもう少し人気しそうだが、当時の彼はまだ21歳の若手ジョッキーというのに加え、JRAでの重賞制覇も1つのみ。目立った実績がなかったことを考えれば、この評価は妥当ともいえるだろう。
だが、そんな評価を嘲笑うかのように、アユサンは直線で突き抜ける。スタートからサマリーズとクロフネサプライズが逃げ、レースは速い流れで進む。その先行集団を見ながら中団で進めたアユサンは、直線で前が空いた瞬間に一気に脚を伸ばして先頭へ。
外からクリスチャンの兄であるミルコ・デムーロ騎手が跨るレッドオーヴァルが怒涛の勢いで迫り、一度は交わされるかに見えたが、そこからもうひと脚使って突き放してゴール。
JRA史上初となる兄弟ジョッキーによるワンツーフィニッシュの偉業を携えて、牝馬クラシックの一冠目を手にした。
続くオークスは丸山騎手に手綱が戻って4着に終わった。彼女の仔であるドルチェモアやベストシーンがマイルから中距離で活躍しているのを考えると、やはり2400mはやや長かったのだろう。適性外で好走したのだから、やはり能力自体が高かったといえる。
一方、桜花賞でJRAのG1初制覇を飾ったクリスチャン・デムーロ騎手は、この勝利を皮切りに素晴らしい活躍を見せ、2025年11月27日現在、JRAのG1を5勝。毎年冬に訪れる凄腕ジョッキーとして、競馬ファンに存在感をアピールしている。


