
三冠馬というのは、日本競馬の歴史上これまで牡馬8頭、牝馬7頭という限られた馬たちに与えられた称号である。しかしそんな名馬であっても、三冠レース全てで圧勝を飾っているとも限らない。そこで今回は、三冠達成の過程で肝を冷やした三冠レースをプレイバック。偉業達成に黄信号が灯ったレースを5つ選び、順に紹介していく。[5/5ページ]
⑤リバティアイランド
■2023年秋華賞
牡牝ともに無敗の三冠馬が誕生した2020年。本来であれば競馬場も大盛り上がりのはずであったが、残念ながらコロナ禍によって無観客競馬の真っ只中。
しかしそれから3年後、コロナの流行も落ち着いて競馬場に人が戻ってきた中で現れた新たなヒロインが、リバティアイランドであった。
デビュー2戦目のアルテミスSこそ2着に取りこぼしたものの、それ以外のレースは常に強さを発揮し、史上7頭目となる牝馬三冠を達成。
2着との差は桜花賞が最も小さいのだが、リバティアイランドを最も追い詰めた馬は、秋華賞のマスクトディーヴァであろう。
オークスを6馬身差という圧勝で制して二冠を達成していたリバティアイランドは、ぶっつけながら単勝1.1倍という圧倒的な1番人気。
対するマスクトディーヴァは、春二冠には出走が叶わなかったが、その後1勝クラスを制し、2階級格上挑戦だったローズSも7番人気という伏兵評価ながら勝利。
一躍、秋華賞の有力馬に名乗りを挙げた。とは言っても、単勝13.0倍の3番人気と、オッズの上ではリバティアイランドと大きな差が開き、発走を迎えた。
レースは、コナコーストがハナを切り、ミシシッピテソーロが2番手を追走。リバティアイランドはオークスと同じく好位の後ろにつけ、マスクトディーヴァは中団後方寄りからの競馬。
前半1000mの通過は61秒9という緩い流れで進んでいき、リバティアイランドは早くも4角手前で外から浮上。先行集団の外に並んで4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入ると、早々に先頭へと抜け出したリバティアイランド。一方のマスクトディーヴァは4角でゴチャついて進路がなくなり、外へと切り替える大きなロス。
しかしそこから猛然と追い込んできて、最後は1馬身差まで詰めたところがゴール。
もちろん勝ったリバティアイランドが一番強かったのだが、京都内回りであれだけの不利を受けながら鬼脚を使った、マスクトディーヴァも強く印象に残ったレースであった。
リバティアイランドがその後は牝馬限定戦に出走しなかったこともあり、両馬の対戦はこの一度限り。子どもたちの対決も見ることができないというのは、本当に残念でならない。
今回紹介した5つもそうだが、三冠馬の危機レースは菊花賞や秋華賞に多いイメージ。やはり三冠達成の重圧もあるだろうし、春二冠と比較して間隔が空いているぶん、ライバルの成長や新興勢力の台頭があることも理由のひとつだろう。
圧倒的な強さを誇る三冠馬も、もちろんワクワクするが、その絶対的な存在に迫るライバルがいる状況というのもまた、競馬の面白さを感じるものである。
【了】
【著者プロフィール:中西友馬】
1993(平成5)年6月18日、神奈川県横浜市生まれ。大学卒業後、競馬新聞社に入社し、約7年間専門紙トラックマンとして美浦に勤務。テレビやラジオでのパドック解説など、メディア出演も行っていた。2024年よりフリーライターとしての活動を始め、現在は主に、株式会社カンゼンが運営する競馬情報サイト『競馬チャンネル』内の記事を執筆している。
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