
三冠馬というのは、日本競馬の歴史上これまで牡馬8頭、牝馬7頭という限られた馬たちに与えられた称号である。しかしそんな名馬であっても、三冠レース全てで圧勝を飾っているとも限らない。そこで今回は、三冠達成の過程で肝を冷やした三冠レースをプレイバック。偉業達成に黄信号が灯ったレースを5つ選び、順に紹介していく。[4/5ページ]
④コントレイル
■2020年菊花賞
父のディープインパクト以来、史上3頭目となる無敗の三冠制覇を達成したコントレイル。春のクラシック二冠で2着となったのはサリオスであったが、最も追い詰めたという点でいうなら、菊花賞のアリストテレスであろう。
6戦6勝で菊花賞を迎えたコントレイルは、父には及ばずとも、断然の1番人気となる単勝1.1倍。サリオス不在の中、圧倒的な支持を集めていた。
対するアリストテレスは、2勝クラスを勝ったばかりでいまだ条件馬の身。単勝23.0倍の4番人気で発走を迎えた。
レースは、外枠からでもキメラヴェリテが気合いをつけてハナを切る。バビットが2番手につけ、コントレイルは中団からの競馬。そしてその後ろをピッタリと影のように追走していたのが、アリストテレスとルメール騎手であった。
ペース自体は極端に速かったわけではなかったが、逃げるキメラヴェリテは4角手前で失速。2番手からバビットが押し出されるように先頭へと立ち、コントレイルとアリストテレスも前を射程圏に入れて4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入ると、先頭のバビットにガロアクリークとディープボンドが並びかける。しかしそれも束の間、さらにその外から併せ馬の形でコントレイルとアリストテレスが抜け出し、残り300mからはマッチレースの様相。
一旦は外からアリストテレスが前に出るかに思われたが、二冠馬の意地を見せるコントレイルが食い下がり、前に出させない。後続を3馬身半突き離した2頭の争いは、クビ差で内のコントレイルに軍配が上がった。
ルメール騎手の徹底マークでアリストテレスの勝ちパターンにも思われたが、同世代の馬には負けられないコントレイルのプライドが上回った素晴らしい追い比べ。
明らかに適性外の3000mでも、能力の高さと勝負根性で振り切ったコントレイルと、相手をコントレイル1頭に絞り、常にすぐ後ろで徹底マークしたルメール騎手とアリストテレス。
しかし、いつもの年であれば熱狂の渦と化していたであろうゴール前も、コロナ禍の無観客競馬によって静かなものであった。


