
三冠馬というのは、日本競馬の歴史上これまで牡馬8頭、牝馬7頭という限られた馬たちに与えられた称号である。しかしそんな名馬であっても、三冠レース全てで圧勝を飾っているとも限らない。そこで今回は、三冠達成の過程で肝を冷やした三冠レースをプレイバック。偉業達成に黄信号が灯ったレースを5つ選び、順に紹介していく。[3/5ページ]
③ジェンティルドンナ
■2012年秋華賞
桜花賞では、天才少女ジョワドヴィーヴルに1番人気を譲りながら勝利。にも関わらず、3番人気に甘んじたオークスでは、後続を5馬身引き離す圧勝劇で二冠を達成した、ジェンティルドンナ。
秋初戦となるローズステークスも勝利し、盤石の形で秋華賞本番を迎えていた。
一方、桜花賞、オークス、ローズステークスともにジェンティルドンナに苦杯を飲まされていたのが、3戦すべてで2着となっていたヴィルシーナ。それだけに、三冠目だけは絶対に譲れないという思いを強く持っていた。
レースは、最内枠から押して先手を取りにいったヴィルシーナがハナ。デビューから一度も逃げたことのない馬が、奇襲ともいえる逃げの手に出た。
しかし向正面でペースが緩んだところを、最後方にいたチェリーメドゥーサがひとまくり。これでペースは上がったが、それでも1000mの通過は62秒2とかなりのスロー。
ヴィルシーナは離れた2番手につけ、ジェンティルドンナは中団からレースを進める。結果的にはチェリーメドゥーサが大逃げのような形で4角を回り、最後の直線へと向かう。
ジェンティルドンナは3角から鞍上の手が動き、直線でも反応が鈍い。チェリーメドゥーサの奇襲が決まったかに思ったが、やっとエンジンのかかったジェンティルドンナとヴィルシーナが併せ馬の形で伸びてきて、残り50mで前を並ぶ間もなく抜き去っていた。
そして、2頭並んでゴール線を通過したように見えたが、写真判定の結果、ハナ差でジェンティルドンナの勝利。たった7センチというわずかな差での決着であった。
ジェンティルドンナは、史上4頭目の牝馬三冠を達成。一方、レース序盤は先頭を走る競馬でジェンティルドンナを追い詰めたヴィルシーナは、牝馬三冠すべてで2着という、史上初の記録を達成することとなった。
競馬に“たられば”は禁物だが、生まれる時代さえ違えば、この馬も三冠牝馬になっていたのではと思わせる、ヴィルシーナの魂の走りであった。


