
一世代で100頭以上の産駒を送り出すこともある種牡馬に対し、繁殖牝馬が1年に残せる1頭のみである。そのため、繁殖牝馬が競走馬の質に与える影響は大きく、優秀な母の産駒はセールで高値が付くことも多い。
そこで今回は、複数のGⅠ馬や重賞馬を送り出してきた繁殖牝馬の中から、特に優秀な母5頭を取り上げ紹介していく。[5/5ページ]
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⑤エリモピクシー
最後に紹介するのは、現役時代にエリザベス女王杯4着の実績があるエリモピクシー。
一般的に繁殖牝馬として成功する馬は、早くに現役を引退している馬が多い。その中でこの馬は、息の長い活躍を見せて7歳まで現役を続け、重賞勝ちこそないものの7勝をマーク。ファイナルSを制して、OPクラスでも勝利を挙げた。
繁殖牝馬となってからは、初仔のリディル(父アグネスタキオン)がスワンSなど重賞を2勝。さらに2年後に誕生したクラレント(父ダンスインザダーク)は、デイリー杯2歳Sなど重賞を6勝。この2頭はともに、デイリー杯2歳Sを制しているという共通点があった。
またその翌年に誕生した、リディルの全弟となるレッドアリオン(父アグネスタキオン)は、マイラーズCなど重賞2勝。さらにその翌年に誕生したサトノルパン(父ディープインパクト)は、京阪杯を勝利。ここまでなんと、初仔から第4仔まで4頭連続で重賞馬を出した。
その後もレッドアヴァンセ(父ディープインパクト)、レッドオルガ(父ディープインパクト)、レッドヴェイロン(父キングカメハメハ)と、3頭のOP馬を続けて輩出。
G1馬こそ出ていないが、無事にデビューを果たした8頭の産駒のうち、7頭がOP馬になるという驚異のアベレージをマーク。さらには産駒が挙げた重賞11勝のうち、なんと8勝が芝1600mであり、同じタイプの産駒をコンスタントに輩出したエリモピクシー。
どの父をつけても安定して、芝のマイラーOP馬を輩出。非常に影響力が強く、凄みを感じる母であった。
このように、複数の活躍馬を輩出している繁殖牝馬は、必ずしも現役時代に大きな活躍をしていた馬ばかりではない。
競走馬として自身もG1を制した馬もいれば、未出走や未勝利だった馬もいる。来年のPOGシーズンに向けて、注目の繁殖牝馬を見つけるというのも、面白いかもしれない。
【了】
【著者プロフィール:中西友馬】
1993(平成5)年6月18日、神奈川県横浜市生まれ。大学卒業後、競馬新聞社に入社し、約7年間専門紙トラックマンとして美浦に勤務。テレビやラジオでのパドック解説など、メディア出演も行っていた。2024年よりフリーライターとしての活動を始め、現在は主に、株式会社カンゼンが運営する競馬情報サイト『競馬チャンネル』内の記事を執筆している。
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