
一世代で100頭以上の産駒を送り出すこともある種牡馬に対し、繁殖牝馬が1年に残せる1頭のみである。そのため、繁殖牝馬が競走馬の質に与える影響は大きく、優秀な母の産駒はセールで高値が付くことも多い。
そこで今回は、複数のGⅠ馬や重賞馬を送り出してきた繁殖牝馬の中から、特に優秀な母5頭を取り上げ紹介していく。[3/5ページ]
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③ハルーワスウィート
次に紹介するのは、あるオーナーとの結びつきがかなり強い繁殖牝馬、ハルーワスウィート。
現役時代は芝で2勝とダートで3勝を挙げて、準オープンまで駆け上がった馬。この馬の特徴といえば、生まれつき尻尾がないということ。競走馬にとって尻尾はバランスを取るのに重要で、その尻尾がないというのはけっこうなハンデである。そのハンデをはね返して5勝を挙げているというのは、この馬が持つ能力の高さの裏返しと言えるかもしれない。
そしてこの尻尾のないハルーワスウィートの走りに現役時代から注目していたのが、「ハマの大魔神」こと佐々木主浩オーナー。ハルーワスウィートが引退した後に繁殖牝馬となると、初年度産駒のファルスター(父ダンスインザダーク)から全ての産駒を所有した。
すると、第2仔のヴィルシーナ(父ディープインパクト)がヴィクトリアマイル連覇を達成し、G1を2勝。この馬に関しては、ヴィクトリアマイル連覇よりも牝馬3冠全て2着のほうが印象的かもしれない。さらにその3年後に誕生したシュヴァルグラン(父ハーツクライ)は、キタサンブラックらを撃破してジャパンカップを勝利。
そしてその翌年に誕生したヴィルシーナの全妹ヴィブロス(父ディープインパクト)は、姉がハナ差届かなかった秋華賞を勝利すると、ドバイターフも制してG1・2勝。全て佐々木オーナー所有のこの3頭で、G1・5勝を挙げている。
もちろんG1・5勝もすごいのだが、この3頭でG1の2着は10回を数え、G1・15連対を果たしている。まさに馬主孝行のハルーワスウィートであるが、なぜかオーナーの吉田和美氏ではなく、佐々木主浩氏の懐を温めた名繁殖牝馬であった。



