⑤2019年(勝ち馬コパノキッキング)
キタサンミカヅキが連覇を達成した翌年となる、2019年の東京盃。この年は戦前から、1頭の馬と1人の騎手に話題が集中。それが、コパノキッキング×藤田菜七子騎手であった。
コパノキッキングは、3歳の年末にカペラSで重賞初制覇。その後、翌年の根岸Sで重賞連勝を飾ると、フェブラリーSには藤田菜七子騎手との初コンビで挑んだ。これは、JRA所属の女性騎手にとって、史上初のG1騎乗であった。
レースの結果も、本質的にマイルは長いと言われながらも5着に健闘。そこから、コパノキッキングの主戦となった藤田菜七子騎手。続く東京スプリントとクラスターCでは、惜しくも2着と3着に敗れ、東京盃へと出走していた。
単勝人気は1.5倍と断然の1番人気。史上初となる、JRA女性騎手による重賞制覇に大きな期待がかかり、発走を迎えた。
レースは、外枠からクルセイズスピリツも出て行くが、内枠を利してコパノキッキングがハナを切り、クルセイズスピリツは2番手に控える形となる。久々に逃げる競馬となったコパノキッキングだが、自分のペースでレースを進めていき、むしろついてきた2番手のクルセイズスピリツの方が先に手ごたえが怪しくなる。3〜4角の中間あたりでは2番手にサクセスエナジーが上がり、4角を回って最後の直線へと向かう。
直線に入ってもコパノキッキングの脚いろは衰えず、逆に2番手以下をジリジリと引き離していく。その2番手は、粘り込みを図るサクセスエナジーと、中団から外を伸びてきたブルドッグボスとの争い。しかしその争いを尻目に、最後は4馬身の差をつけたコパノキッキングが快勝。2着にはブルドッグボスが上がり、3着はサクセスエナジーとなった。
勝ったコパノキッキングは、重賞3勝目を飾り、鞍上の藤田菜七子騎手は重賞初制覇。JRA所属の女性騎手として史上初の快挙となった。コパノキッキングと藤田菜七子騎手のコンビはその後、同年のカペラSも制覇。こちらもJRA所属の女性騎手として史上初となる、JRA重賞制覇となった。
16年ぶりとなるJRA所属の女性騎手としてデビューし、現役の女性騎手のパイオニア的存在となっている藤田菜七子騎手。このコパノキッキングとのタッグは特に印象的で、このコンビで次々と歴史を塗り替えていった。
このように、歴代の勝ち馬には地方・JRAのスピード自慢が数多く名を連ねる東京盃。
やはり交流重賞となってからはJRA勢が強く、キタサンミカヅキが勝った2018年を最後に、2023年までJRA勢が5連勝中である。
それでも、その5年間でも1〜3着をJRA勢が独占したのは、2021年と2022年のみ。ほかの交流重賞と比較すると、地方勢の健闘も目立つレースである。
今年はどんなスピードレースを見ることができるのか、JRA勢の牙城を崩す地方馬が現れるのか、その辺りに注目したい。
(文●中西友馬)