
競馬において単勝オッズが1倍台というのは、ファンからの絶対的な信頼感の象徴ともいえる。そんなオッズをG1の舞台で示した馬は多数いるが、その中でもケタ違いな単勝支持率を集めた馬となると相当な名馬揃いである。
今回は、G1レースで1.1倍の支持を集め、単勝支持率が非常に高かった馬を5頭に絞り紹介していく。[5/5ページ]
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⑤ディープインパクト
2005年菊花賞 79.0%
ここまで紹介してきた馬達の中でもただ1頭、図抜けて単勝支持率が高いのはやはりディープインパクトである。
デビューした翌週に武豊騎手が「ファンのみなさんに覚えておいてほしい馬です」とコメントし、走る度にその期待に違わぬ姿を見せ続けてきたディープインパクト。春の二冠に加えてトライアルの神戸新聞杯も無敗のまま制したことで、三冠当確というムードが各所で漂い始めていた。
そして迎えた菊花賞、単勝オッズはJRAのG1では初となる1.0倍の元返しオッズとなり、歴代のG1レース史上最高の単勝支持率79.0%を記録。さらに当日の京都競馬場ではディープインパクトの三冠祈念の弁当まで販売され、異様とまで言える雰囲気に達していた。
のちに武騎手もこの日を「もし負けたら向こう正面から帰ろうと思っていた」と振り返っていただけに、日本全国の競馬ファンの目が「ディープインパクトがどのようにして三冠を達成するか」というところに集まっていたと言えるだろう。
ゲートが開くと、これまで出遅れ続きだったディープインパクトが好スタートを切る。だが、逆にそれでスイッチが入ったか、スタンド前まで引っかかり通しで進んでいた。しかし、武騎手は馬群が落ち着いたタイミングで内に入れ、相棒をうまくなだめてスタミナの浪費を防いだ。
その後は中団から進めると、直線では大外から飛ぶような末脚で粘るアドマイヤジャパンを捕らえて勝利。道中をスローペースで進め、勝負所で一気に後ろを突き放す作戦を取ったアドマイヤジャパンの横山典弘騎手はさすがの騎乗だったが、それすらも封じ込める圧倒的な強さで21年ぶりの無敗三冠を達成した。
この翌年も天皇賞(春)を当時のレコードタイムで制するなど変わらぬ活躍を見せ、種牡馬入りした後もコントレイルを筆頭に多数の活躍馬を競馬界に送り込んだディープインパクト。
だが、彼が残した功績はそれだけではない。この菊花賞で単勝元返しの馬券が発生したのをきっかけに、JRAは2008年から100円元返しの払い戻しが発生する際に10円を上乗せする「JRAプラス10」を導入。
これにより、余程の特例がない限り100円の払い戻しというのは中央競馬からなくなり、馬券を買う人にとっては嬉しいルールが増えた。
競馬を知らない人でも彼の名前は知っているというほどの存在であったディープインパクトは、馬券のルール変更を検討させるほどの影響を及ぼす、凄まじい存在であった。
【了】
【著者プロフィール:小早川涼風】
祖父、父の影響で幼い頃から競馬に触れ、社会人後ライターに。地方、中央を問わない競馬漬けの日々を送る。初めて好きになった馬はサイレンススズカ。思い出の馬はファストフォース。
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