
競馬において単勝オッズが1倍台というのは、ファンからの絶対的な信頼感の象徴ともいえる。そんなオッズをG1の舞台で示した馬は多数いるが、その中でもケタ違いな単勝支持率を集めた馬となると相当な名馬揃いである。
今回は、G1レースで1.1倍の支持を集め、単勝支持率が非常に高かった馬を5頭に絞り紹介していく。[3/5ページ]
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③ファインモーション
2002年秋華賞 72.0%
世界的なオーナーブリーダー、クールモアグループの所有するBarronstown Studで生まれ育ったファインモーション。
デビュー前からジャパンカップを制したピルサドスキーの半妹として話題になり、新馬戦では武豊騎手が「ダービー行っても勝てますよ。フランスオークスでも勝負になる」とコメントするほどの圧勝劇を飾った。
初勝利後に骨にヒビが見つかって放牧に出されたため、その2つへの挑戦は幻と終わったが、夏に復帰すると一気に3連勝。
さらにローズステークスでは春に桜花賞を勝ったアローキャリーらを相手に3馬身差の快勝劇を挙げたにもかかわらず「能力の半分も出していない」と騎乗した松永幹夫騎手(現:調教師)がコメントしたことなども相まって、秋華賞での単勝オッズは1.1倍、支持率は72.0%の圧倒的な人気に推された。
このレースから同年、フランスを騎乗拠点に据えていた武騎手が鞍上に復帰。レース前に「向こうのクラシックで乗ったどんな馬よりずっと強い」とコメントしており、果たしてその手応えがどれほどのものなのか、注目は集まっていた。
レースでは好スタートからすんなり前目に取りつき、引っかかることもなく落ち着いて道中を進める。そして勝負所で自然に加速すると、各馬の動きが激しくなるのを尻目に馬なりで先頭に抜け出し、軽く肩ムチを入れられるとエンジンが点火。
一気に後続を突き放した彼女は、既に100mの地点で武騎手が流しに入るほどのぶっちぎりでG1初勝利を飾った。
この勝利で武騎手は前人未到のG1級競走への騎乗機会5連勝を達成。翌週のノーリーズンでは落馬の憂き目に遭ったが、2週間後に再びファインモーションでエリザベス女王杯に挑戦するとここもあっさり完勝し、しっかり良い流れを取り戻した。
武騎手に「世界で勝負になる」と意識させたファインモーション。結果的に海外遠征はないまま現役生活を終えたが、もし無事にヨーロッパへ飛んでいたなら、一体どんな走りを我々に見せてくれていたのだろうか。



