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【C.デムーロ騎手の神騎乗GⅠ5選】短期免許とは思えない存在感!?“天才”にエスコートされた名馬たち

text by 中西友馬
2013年桜花賞を制したアユサン(写真左)、2着レッドオーヴァル(写真右)
2013年桜花賞を制したアユサン(写真左)、2着レッドオーヴァル(写真右)

天皇賞(秋)の週から短期免許で騎乗している、C.デムーロ騎手。兄にM.デムーロ騎手をもつ、フランスを主戦場とする名騎手である。今秋のG1戦線でも有力馬に騎乗し結果を残している。今回は、C.デムーロ騎手のこれまでの活躍に注目。日本馬に騎乗してG1を制したレースの中から、印象に残ったものを5つ紹介する。[1/5ページ]

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①2013年桜花賞(勝ち馬アユサン)

 最初に紹介するのは、2013年の桜花賞。2011年に地方競馬の短期免許を取得し、日本での初騎乗を果たしたC.デムーロ騎手は、その翌年の2012年にはJRAの短期免許を初めて取得。京都牝馬ステークスではドナウブルーに騎乗して勝利を挙げ、重賞初制覇を達成した。

 そして迎えた、2013年の桜花賞。C.デムーロ騎手は騎乗予定の馬がいなかったが、アユサンに騎乗予定だった丸山元気騎手が前日の落馬で負傷。空いていたC.デムーロ騎手に、急遽白羽の矢が立った。

 ただ、アユサンは7番人気と伏兵評価の1頭。1番人気は前哨戦のチューリップ賞を完勝したクロフネサプライズで、2番人気はそのチューリップ賞でC.デムーロ騎手が騎乗して7着に敗れた、M.デムーロ騎手騎乗のレッドオーヴァル。この2頭が人気を集める形で、発走を迎えた。

 レースは、内枠を利してサマリーズがハナを切り、前走逃げ切り勝ちのクロフネサプライズは、これをぴったりマークする形の2番手。アユサンは中団から運び、レッドオーヴァルは後方でじっくりと構えていた。

 前は3〜4角の中間あたりでは早くもサマリーズが後退し、クロフネサプライズが先頭へと入れ替わる。アユサンは馬群の中、レッドオーヴァルは馬群の一番外へと持ち出して4角を回り、最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、クロフネサプライズが堂々先頭も、後続がジワジワと追い詰めてくる。ローブティサージュが先頭へと並びかけようとするも、その外へと持ち出したアユサンの伸び脚が良い。さらに大外からレッドオーヴァルも突っ込んできて、ゴール前は激戦。

 粘りに粘ったクロフネサプライズを交わしたアユサンの外からレッドオーヴァルがまとめて飲み込むかに見えたが、前に出られてから差し返すようにもうひと伸びを見せたのが、C.デムーロ騎手の叱咤に応えた内のアユサン。

 最後はクビ差前に出て、ゴール板を駆け抜けた。レッドオーヴァルから2馬身半差の3着は、後方待機のプリンセスジャック。人気のクロフネサプライズは、その後ろの4着に敗れた。

 勝ったアユサンはG1初制覇で、鞍上のC.デムーロ騎手もJRA・G1初制覇。そんなメモリアルな勝利に加えて、2着レッドオーヴァルの鞍上は、兄のM.デムーロ騎手。JRA・G1史上初となる、兄弟騎手によるワンツー決着も同時に達成された。

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