
どれほど輝かしいキャリアを築いた騎手でも、必ず「G1初制覇」という特別な瞬間が存在する。あっさりとG1の壁をクリアした者もいれば、何度も跳ね返され、苦悩の末にようやくタイトルを掴み取った者もいる。今回は騎手のG1初制覇の中から、特に“劇的”だった5人を厳選。その一戦一戦をじっくりと振り返る。[3/5ページ]
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③江田照男
1991年天皇賞(秋) プレクラスニー
続いて紹介するのは、「穴男」の異名を持つ江田照男騎手。そんな江田照男騎手のG1初制覇は、プレクラスニーで制した、1991年の天皇賞(秋)。
この年の注目の的は、メジロマックイーン。前年の菊花賞でG1初制覇を果たすと、古馬となってからも天皇賞(春)を勝利して、2つ目のG1タイトルを奪取。
宝塚記念こそ、同じ冠を持つメジロライアンに敗れて2着となるも、前哨戦の京都大賞典を完勝して、天皇賞(秋)に臨んでいた。
メジロマックイーンは、単勝1.9倍という抜けた1番人気。対するマックイーンと同世代のプレクラスニーは、エプソムカップと毎日王冠を連勝して天皇賞(秋)に出走。こちらは3番人気に支持されて、発走を迎えた。
レースは、雨の降りしきる不良馬場の中で行われ、序盤は人気各馬が前へと出ていく展開。その中からプレクラスニーがハナを切り、その直後にホワイトストーンがつける。
メジロマックイーンは、その2頭を見ながら3番手から進めていく。前半1000mは61秒1で通過。
不良馬場を差し引くと平均やや速めと思われる流れで進み、メジロマックイーンは3番手からジリジリと前との差を詰めていく。前を射程圏に入れて4角を回り、最後の直線へと向かう。
前の3頭が後ろを離して直線へと入るが、その中からホワイトストーンが脱落。前の2頭は競り合っていたが、残り300mを切った辺りでメジロマックイーンが前へと出ると、グングンと突き放していく。
接戦となる2着争いを尻目に、メジロマックイーンが大きな差をつけて1位入線。後続の追い上げをなんとか凌いだプレクラスニーが6馬身差の2位入線を果たした。
しかしその後、スタート直後に内に切れ込んだメジロマックイーンが、他馬の走行を妨害したとして、審議の末18着に降着。2位入線のプレクラスニーが、繰り上がっての勝利となった。
勝ったプレクラスニーは、4連勝でG1初挑戦初制覇を達成。鞍上の19歳江田照男騎手も同じく、G1初挑戦初制覇の偉業を達成した。
JRA史上初となる、G1での1位入線馬の降着となったレースは、こちらも史上初となる、10代での天皇賞制覇が達成されたレースとなったのであった。



