
歴代最強馬という議題で競馬ファンが話すとなると、さまざまな名馬が登場することが予想される。
例えば、イクイノックスを挙げれば「それを倒したドウデュースのほうが強い」という意見もあるだろう。
そこで今回は、誰にも負けたことのない馬に注目。無敗のまま現役を引退したG1馬を国内外で5頭ピックアップし、順に紹介する。[5/5ページ]
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⑤フライトライン(6戦6勝)
最後に紹介する馬は、フライトライン。米国で無敗のままキャリアを終えた馬である。
デビュー戦の時期は周りの同期と比較して遅く、3歳4月の未勝利戦。その時点で既にケンタッキーダービーの1週前であったため、米国3冠競走には縁がなかった。
しかし、そのデビュー戦で後続に13馬身以上の差をつけて圧勝すると、9月に出走した2戦目も終始馬なりで12馬身以上の差をつける楽勝。
ここまで2戦はダート1200mだったが、3戦目のマリブステークスでは、距離を1ハロン延長して初のG1挑戦。しかしそれらのハードルも軽く飛び越え、馬なりのまま11馬身半の差をつけて圧勝した。
3歳シーズンを3戦3勝で終えたフライトラインは、4歳シーズン初戦で初めて東海岸へと遠征。距離もマイルまで延ばしてメトロポリタンハンデキャップへと挑むこととなる。
スタートで出遅れてハナを切ることのできなかったフライトラインだが、逃げ馬をぴったりとマークすると、4角手前では早々と前を交わして先頭。これまでと違うレース展開ながらも、最後は流す余裕を見せての6馬身差圧勝であった。
そして5戦目に選択したレースは、パシフィッククラシック。さらに距離を2ハロン延長し、中距離戦線の猛者達との対決に挑んだ。
ハナを切ろうと思えば切れたが、鞍上のフラヴィアン・プラ騎手は逃げ馬をぴったりとマークする戦法を選択。
しかしスピードの違いで向正面では馬なりで先頭へと立つと、そこから後続は離れていく一方。最後の直線ではほとんど流しながらも後続に20馬身近い差をつけての大楽勝。
同年のドバイWCを制したカントリーグラマーを子ども扱いする衝撃の勝利で、距離延長に対する不安説を一蹴する走りであった。
そして6戦目は、BCクラシック。さまざまなハードルを乗り越えてきたこの馬に、もはや不安な点は一切なく、逃げるライフイズグッドを直線入り口で競り落とすと、あとは一人旅。8馬身以上の差をつけてまたも圧勝し、このレースを最後に現役引退を発表した。
圧巻のパフォーマンスだったパシフィッククラシックで、ダート馬として史上最高のレーティング139を獲得していたフライトライン。年明けにそのレーティングは上方修正され、フランケルと並ぶ140の大台へと乗った。
6戦6勝、その6勝で2着馬につけた着差の合計が71馬身という、圧勝劇の連続だったフライトライン。その初年度産駒は、順調ならば来年デビュー予定。既に日本の競馬関係者が複数頭落札しており、日本で米国最強馬の子どもの走りが見られる日も近い。
このように、日本の無敗馬たちは、怪我によって現役引退を余儀なくされたのに対して、海外の無敗馬たちは、種牡馬価値を考えて無敗での引退を選択しているケースが多い。
考え方は国によってさまざまであるが、今後はどんな無敗馬が競馬界を盛り上げてくれるのか、非常に楽しみである。
【了】
【著者プロフィール:中西友馬】
大学卒業後、競馬新聞社に入社し、約7年間専門紙トラックマンとして美浦に勤務。テレビやラジオでのパドック解説など、メディア出演も行っていた。2024年よりフリーライターとしての活動を始め、現在は主に、株式会社カンゼンが運営する競馬情報サイト『競馬チャンネル』内の記事を執筆している。
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