長く競馬を続けていると、応援している馬が馬群に詰まって力を出し切れず、悔しい敗戦を味わうことは少なくない。だが過去の名馬の中には、そんな窮地に追い込まれながらも見事に状況を打開し、G1タイトルをつかんだ馬たちが存在する。今回は、その中でも特に印象に残る5頭をピックアップして紹介する。[5/5ページ]
⑤ヴェラアズール(2022年ジャパンカップ)

最後に紹介するのは、2022年のジャパンカップ。個人的には、このテーマで書くと決めたとき、一番はじめに思いついたレースである。
この年のジャパンカップは、混戦模様。前走の京都大賞典で重賞初制覇を飾ったヴェラアズールは、前年のダービー馬シャフリヤールと、そのシャフリヤールに天皇賞(秋)で先着した3歳馬ダノンベルーガに次ぐ、3番人気であった。
天皇賞(秋)を制した3歳馬イクイノックスがおらず、確固たる中心馬不在で発走を迎えた。
レースは、ユニコーンライオンがハナを切り、ハーツイストワールが続いて5枠両頭が引っ張る流れ。ダノンベルーガとヴェラアズールは中団あたりで、ほぼ同じような位置どり。それを見るようにシャフリヤールが進めていた。
前半1000mの通過は61秒1と、平均〜やや遅めの流れ。馬群は縦長にならず、一団のまま4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入ると、ハーツイストワールがユニコーンライオンを交わして先頭へと立つも、内外から後続が殺到。
内からヴェルトライゼンテ、外からダノンベルーガが伸びてきて、さらにその外からシャフリヤールがまとめて交わす勢い。
ヴェラアズールは馬群の中で揉まれに揉まれたが、遅ればせながらその馬群を割って伸びてくる。
ゴール前はその争いからダノンベルーガが脱落し、3頭による追い比べ。その真ん中から抜け出したのは、名手ムーアに導かれたヴェラアズール。内外のライバルを従えて、先頭でゴールへと飛び込んだ。
ハーツイストワールに騎乗していた武豊騎手が後日、「どうやってあそこから出てきたんだ」と舌を巻くほど、絶体絶命のピンチを切り抜けたレースであった。
このように、絶体絶命のピンチを切り抜けたレースは、馬の能力もさることながら、騎乗している騎手も名手揃い。
そんな中、まだデビュー5年目、23歳の若さで「テイエムオペラオー包囲網」を切り抜けた和田竜二騎手は、相当なプレッシャーに打ち勝っての勝利だったことは、想像に難くない。
【了】
(文●中西友馬)
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