長く競馬を続けていると、応援している馬が馬群に詰まって力を出し切れず、悔しい敗戦を味わうことは少なくない。だが過去の名馬の中には、そんな窮地に追い込まれながらも見事に状況を打開し、G1タイトルをつかんだ馬たちが存在する。今回は、その中でも特に印象に残る5頭をピックアップして紹介する。[4/5ページ]
④グランアレグリア(2020年マイルチャンピオンシップ)

次に紹介するのは、2020年のマイルチャンピオンシップ。このレースの中心は、直前のスプリンターズSで短距離女王にも輝いた、グランアレグリア。
今回は、桜花賞、安田記念と勝利していて絶対的な自信を持つマイルということもあり、単勝1.6倍という断然の1番人気に支持されて、発走を迎えた。
レースは、内枠を利してレシステンシアがハナを切り、ラウダシオンが2番手を追走。注目のグランアレグリアも、スプリント戦を経験した後ということもあって、いつもより出脚がついて好位のインコースに収まる。
前半800mの通過は46秒9と、マイルG1にしてはかなりゆったりとしたペースで流れ、後方の数頭以外は一団の馬群。密集した馬群のままで4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入っても、このペースだと前がなかなか止まらない。逃げるレシステンシアに、並びかけようとするラウダシオンとアドマイヤマーズ。
さらにその外からインディチャンプが伸びてくる中、グランアレグリアはラウダシオンとアドマイヤマーズの間を突こうとするが、スペースがなく断念。
鞍上のルメール騎手は、インディチャンプを行かせてからその外へと進路を切り替えようとするが、スローの瞬発力勝負でのこのロスは致命的。
そうこうしているうちにインディチャンプは抜け出し、完全な勝ちパターン。
しかし、グランアレグリアはインディチャンプの外へと持ち出すと、残り100mで2馬身ほどあった差を一気に詰め、最後は接戦にも持ち込ませずに差し切ってみせた。
はたから見ていると、かなり絶体絶命に見えたレース。ただ、グランアレグリア鞍上のルメール騎手にしてみれば、スペースさえできれば余裕で差し切れると分かっていたような落ち着きぶりであった。



