長く競馬を続けていると、応援している馬が馬群に詰まって力を出し切れず、悔しい敗戦を味わうことは少なくない。だが過去の名馬の中には、そんな窮地に追い込まれながらも見事に状況を打開し、G1タイトルをつかんだ馬たちが存在する。今回は、その中でも特に印象に残る5頭をピックアップして紹介する。[3/5ページ]
③ジェンティルドンナ(2014年ドバイシーマクラシック)

続いて紹介するのは、2014年のドバイシーマクラシック。このレースには、牝馬2頭が日本から参戦していた。
1頭目は、ジェンティルドンナ。3歳時に牝馬3冠を達成し、4歳時には史上初となるジャパンカップ連覇を達成。ドバイシーマクラシックは、前年2着となっており、2年連続の出走であった。
2頭目は、デニムアンドルビー。オークス3着、秋華賞4着と牝馬3冠には縁がなかったが、エリザベス女王杯から中1週で挑んだジャパンカップでジェンティルドンナの2着。G1初制覇を狙ってのドバイ遠征であった。
対する外国勢では、前年のBCターフ勝ち馬マジシャンが有力とされて、発走を迎えた。
レースは、デニムアンドルビーが好スタートからハナを切る展開。前走のジャパンカップでは、後方待機策から上がり最速の脚で追い込んできていたが、一転して逃げの手に出る。
ジェンティルドンナは中団のインコースから進め、マジシャンは後方からという展開となった。隊列に大きな動きはないまま進んでいき、インコースにつけていたジェンティルドンナは、少し外に持ち出し加減で4角を回って直線へと向かう。
直線に入ると、逃げるデニムアンドルビーを交わしてアンビバレントが先頭へと立ち、伸びてきたジェンティルドンナも、デニムアンドルビーとアンビバレントの間を突こうとするが前が塞がる。
ならばとアンビバレントの外へと進路を切り替えるも、今度は外を伸びてきたシリュスデゼーグルとの間に挟まれてしまう。
万事休すかと思われたが、鞍上のムーア騎手がシリュスデゼーグルのさらに外へと進路を取ると、鋭く伸びて前の2頭を一気に交わして勝利。
何度も進路を切り替えるロスがありながらも前年2着の雪辱を果たし、海外G1初制覇を飾ったレースであった。



