長く競馬を続けていると、応援している馬が馬群に詰まって力を出し切れず、悔しい敗戦を味わうことは少なくない。だが過去の名馬の中には、そんな窮地に追い込まれながらも見事に状況を打開し、G1タイトルをつかんだ馬たちが存在する。今回は、その中でも特に印象に残る5頭をピックアップして紹介する。[2/5ページ]
②ウオッカ(2009年安田記念)

次に紹介するのは、2009年の安田記念。このレースの注目は、2頭のダービー馬による対決であった。
1番人気は、第74代ダービー馬のウオッカ。前走のヴィクトリアマイルは7馬身差の圧勝で、G1連勝を目指して安田記念に出走していた。
2番人気は、第75代ダービー馬のディープスカイ。前走の大阪杯では、ただ1頭59キロを背負いながらドリームジャーニーとクビ差の2着に入っていた。
ともに四位騎手が跨ってダービーを制した2頭の対決。ウオッカは4歳時から主戦となった武豊騎手を背に、発走を迎えた。
レースは、好スタートを決めたローレルゲレイロの内から、押してコンゴウリキシオーがハナを切る。
ローレルゲレイロは2番手となり、ウオッカは中団前あたりのインコース。ディープスカイはそれを見る形で中団馬群から進めていた。
ハナを取りきるまでかなり押していったコンゴウリキシオーが作り出したペースは、前半800mの通過が45秒3という速めの流れ。そのわりに馬群は縦長にならず、密集した状態で4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入ると、横に広がった激戦となり、その中でウオッカは抜群の手ごたえであったが、前が壁となってなかなか追い出せない。
それをマークする形であったディープスカイも苦しい展開であったが、ウオッカの内に進路を見つけ、残り200mで抜け出して先頭。
その時点でウオッカの前にはまだ馬がおり、抜け出したディープスカイとは3馬身ほどの差があった。
しかし、そこからこじ開けるように前の馬の間に入ると、進路を切り替えながらディープスカイの外へと持ち出す。前が開いてからは1頭違う脚でディープスカイまで交わし、先頭でゴール板を駆け抜けた。
前が壁となって絶体絶命のピンチであったが、最後はウオッカのダービー馬の先輩としての意地を見たレースであった。



