⑤2019年(勝ち馬サリオス)
2年連続で勝ち馬がG1馬となり、がぜん注目度の増した2019年のサウジアラビアロイヤルカップ。この年の勝ち馬サリオスもまた、後にG1ホースとなった。
サリオスも前年のグランアレグリアと同じく、開幕週の東京芝1600mの新馬戦を勝利。勝ち時計は1分37秒1と平凡だが、前半1000mの通過が1分03秒5という、新馬戦特有の超スローペースを考えれば仕方のないところであった。
残り600mで逃げるアブソルティスモからは3〜4馬身ほどの差があったが、そこからのヨーイドンで差し切り、逆に2馬身の差をつけた切れ味は特筆もの。さらに、このスローペースで3着馬はアブソルティスモから7馬身の差をつけられているというのも、サリオスの能力の高さを表していた。
そんなレースぶりが評価され、単勝1.5倍の1番人気に支持されていた。2番人気は、こちらも阪神の新馬戦で切れ味を見せたクラヴァシュドール。3番人気は、2戦目に札幌の未勝利戦を勝った、前出アブソルティスモであった。
レースは新馬戦同様、アブソルティスモがハナを切る展開。サリオスは3番手の外につけ、それをぴったりマークする形でクラヴァシュドールが続いていた。前半1000mの通過は59秒2。速くはないがミドルペースに近い流れで、新馬戦からは4秒以上速いペースであった。
その隊列のまま直線を迎え、残り200mまでアブソルティスモが先頭を守っていたが、サリオスとクラヴァシュドールが併せ馬の形で交わしていき、そこからは一騎打ちの様相。外のクラヴァシュドールが優勢に見える瞬間もあったが、最後は内からグイッと伸びたサリオスが前に出て勝利。2着はクラヴァシュドール、そこから3馬身半離れた3着がアブソルティスモであった。
新馬戦と比べて、前半1000m通過が4秒3速かったにも関わらず、上がり3ハロンは新馬戦と同じ33秒1をマーク。新馬戦から走破時計を4秒3縮めた1分32秒7は、2年前のダノンプレミアムのタイムを0秒3更新する、コースレコードであった。
サリオスはその後、無傷の3連勝でG1朝日杯フューチュリティステークスを制し、翌年春のクラシックでは、無敗の3冠馬コントレイルとしのぎを削った。
このように、多数の活躍馬を輩出してきたサウジアラビアロイヤルカップ。年末の2歳G1はもちろん、翌年のクラシック戦線も占う意味でも、注目のレースとして定着してきている。
(文●中西友馬)