ブラッドスポーツ、そう呼ばれるほど競馬の世界で血統は重要だ。勝てない血が淘汰され、勝てる血が残っていく。だが、時として常識を覆す例外も現れる。G1を勝てなかった父から、突然、類まれな才能を持つ名馬が生まれるのだ。まさに「とんびが鷹を生む」。今回は、無冠の父から生まれ、G1を制した5頭の名馬を紹介する。[5/5ページ]
⑤キタサンブラック(父ブラックタイド)

最後に紹介するのは、キタサンブラック。その父はブラックタイドで、現役時代はスプリングSを制し、武豊騎手が騎乗した皐月賞でも、2番人気(16着)に支持された馬。
もちろん現役時代にも素質の片鱗は見せていたブラックタイドであったが、現役引退後にこの馬が種牡馬入りできたのは、父サンデーサイレンス、母ウインドインハーヘアという血統背景。言わずもがな、全弟ディープインパクトの活躍があったからであった。
7歳まで現役生活を送ったブラックタイドは弟から遅れること2年、弟の代替種牡馬として第2の生活をスタートさせる。
そしてその3世代目として誕生したのが、キタサンブラックであった。重賞1勝のブラックタイドを父に持ち、サクラバクシンオー産駒で現役時代未出走の母シュガーハートから誕生したキタサンブラックは、その無尽蔵のスタミナを武器に、数々のG1を制していく。
近代競馬の潮流に逆らうように、国内の中長距離G1を総なめするかのようなローテーションを組み、キタサンブラック自身もそれに応えて勝ち鞍を量産していった。結果的に、現役引退までにG1・7勝を挙げて一時代を築いたキタサンブラック。
そしてさらに驚くべきは、現役引退後の種牡馬生活。先述したように地味な血統であるキタサンブラックは、突然変異のような印象を抱かれ、実績馬であっても種牡馬としての成功は難しいと思われていた。
しかし、初年度産駒からG1・5勝のイクイノックスを輩出。父ブラックタイドも、今年のオークスを制したカムニャックを輩出し、いま最も勢いのあるサイアーラインと言えるだろう。
このように、G1を勝っていない馬が種牡馬になるには、血統背景などに光るものがないと難しいこと。さらには早く結果を出さないと見限られてしまうこともあり、今回紹介した5頭は全て、3世代目までに誕生した馬たちであった。
ここに挙げた馬たち以外にも、シルバーステートやグレーターロンドンなどは、産駒が重賞勝ちを収めている。G1制覇も目前のところまで来ている印象で、今後も注目して見ていきたい。
【了】
(文●中西友馬)
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