⑤2020年(勝ち馬マルシュロレーヌ)
クイーンマンボの圧勝から3年が経った、2020年のレディスプレリュード。この年は4頭が人気を分け合う形となっていた。
1番人気は4歳馬のマルシュロレーヌ。交流重賞初挑戦となるが、初ダートの前走桜島Sでは、牡馬相手に勝利。高いダート適性を示していた。実績では他の人気馬に見劣るが、素質の高さが評価されていた。
2番人気は3歳馬のレーヌブランシュ。関東オークスの勝ち馬で、古馬と初対戦となったブリーダーズGCでも3着。54キロで出走できる斤量面の恩恵も評価されていた。
3番人気は4歳馬のマドラスチェック。同年のTCK女王盃勝ち馬で、今回はその時と同じ森泰斗騎手とのコンビ。ブリーダーズGC5着からの巻き返しに期待がかかっていた。
そして4番人気は7歳馬のプリンシアコメータ。交流重賞4勝の実績はメンバー中トップ。前走のブリーダーズGCでもレーヌブランシュとマドラスチェックに勝利しており、7歳となっても衰えは見られなかった。
この4頭までが単勝10倍を切る人気に推され、発走を迎えた。
レースは、アッキーがハナを切り、マドラスチェックがぴったりと2番手を追走。その直後にプリンシアコメータがつけ、レーヌブランシュも好位集団からの競馬。マルシュロレーヌは中団前めから進め、人気馬の中では一番後ろの位置どりとなった。水の浮く不良馬場にしては、隊列は早めに決まって比較的緩めのペース。3〜4角では早めにマドラスチェックが逃げるアッキーを捕まえに行き、プリンシアコメータと3頭がひと固まり。その後ろからレーヌブランシュとマルシュロレーヌが差を詰めてきて、4角を回って最後の直線へと向かう。
直線に入ると、マドラスチェックがアッキーを交わして先頭。連れてプリンシアコメータも伸びるが、その外から鋭く伸びたのがマルシュロレーヌ。残り150mあたりで一気にマドラスチェックを差し切ると、あとは後続を突き離し、3馬身差をつける快勝。2着には早め先頭からマドラスチェックが粘り込み、2馬身半差の3着にはプリンシアコメータが入った。
勝ったマルシュロレーヌは、交流重賞初挑戦で初制覇。重賞馬たちをまとめて撃破し、牝馬ダート路線に新星誕生となった。
マルシュロレーヌはその後、断然人気に推されたJBCレディスクラシックでは3着に敗れるも、翌年重賞タイトルを3つ上積み。そして勢いそのままに、ダートの本場アメリカへと遠征してBCディスタフに挑戦すると、早め先頭から見事に押し切ってG1初制覇。日本調教馬による海外国際ダートG1制覇は、史上初の快挙となった。
レディスプレリュードの前身であるTCKディスタフは、このBCディスタフを参考にして作られたもの。レディスプレリュードの勝ち馬がBCディスタフで勝利するというのは、非常に感慨深いものであった。
JBCレディスクラシックの前哨戦として創設しただけあり、かなり重要なステップレースとなっているレディスプレリュード。
また、2010年に交流重賞となってからは、2023年までJRA勢が13連勝中であるこのレース。
今後もこの連勝が続いていくのか、またはストップさせる地方馬が現れるのか、注目しながら見ていきたい。
(文●中西友馬)