日本競馬の最高峰・ジャパンカップ。2025年現在、44回の開催で牝馬が勝利したのはわずか10度。そのうち、日本の牝馬でこの大舞台を制したのは、たったの5頭しかいない。今回は歴史に名を残した彼女らが制したジャパンカップをひとつずつ取り上げ、じっりと紹介していきたい。[5/5ページ]
⑤2018・2020年 アーモンドアイ

2020年代前半の競馬界は、新型コロナウイルスの流行などもあって社会の影響を大きく受けた時代であった。
そんな変革の波をまたぎ、人々に感動を与え続けたスターホースの1頭がアーモンドアイである。彼女は2度、ジャパンカップでファンに衝撃を与えた。
1度目の制覇となった2018年は、牝馬三冠を達成した直後の出走。2012年のジェンティルドンナ以来となる牝馬三冠からの連勝を目指したアーモンドアイは、逃げたキセキを2番手で見ながら道中を追走していく。
そして直線、坂を上り切ったあたりでGOサインが出されると、一瞬のうちにキセキを交わして先頭へ。そのまま後続を突き放して勝利した勝ち時計は、驚愕の「2分20秒6」。
これまでアルカセットが所持していた2分22秒1というコースレコードを1秒5も更新する猛時計で、圧巻の「四冠」を達成し、ファンの度肝を抜いた。
そして2度目の制覇となった2020年。アーモンドアイは前走の天皇賞(秋)でG1・8勝目を挙げ、前人未到の「八冠」を達成した。
この年のジャパンカップで引退が決まっていた彼女に挑む大将格は、それぞれ牡牝で無敗の三冠を達成したコントレイルとデアリングタクト。
この時代は新型コロナウイルスの影響で、競馬場での観戦は密を避けるため抽選で当選した人のみが入場という形が取られていたが、それがなければ おそらく東京競馬場は超満員だっただろう。
レースは2年前と同様キセキが逃げるがスタートからしばらくヨシオが競りかけたことも影響して、1000m通過タイムはその時を2秒上回る57秒9。大欅の手前で2番手集団には20馬身近い差をつけていた。
だが、アーモンドアイのルメール騎手は焦らず進め、直線に向いたところでパートナーに気合をつける。
その瞬間、アーモンドアイは一瞬の切れで眼前にいたグローリーヴェイズを捕らえ、後ろから迫ってくるコントレイルとデアリングタクトを突き放す。
そのままの勢いであっという間にキセキを捕らえると、他の追随を許さない末脚で有終の美を飾るゴール坂へ。先輩の意地と自身の強さを見せつける、あまりにも完璧な走りだった。
レース後、この激闘を見届けた数少ないファンから拍手が送られた。音こそ小さかったが、それは時代の主役を張った“絶対女王”に対する全国からの労いと感謝の拍手の代表だっただろう。
2度の衝撃を我々に与えた「九冠馬」は、美しい成績のままターフを去って行った。
【了】
(文●小早川涼風)
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