G1の舞台で、兄と弟が真っ向勝負。競馬界を代表する名騎手・武豊と、現調教師であり元騎手の弟・幸四郎。2人がともに現役だった時代には、バチバチの兄弟対決が実現した。特にG1の舞台でそれぞれが人気馬に騎乗する際は、ファンの注目も高まった。そこで今回は、そんな兄弟対決の中から、記憶に残る名勝負5戦を振り返る。[2/5ページ]
②2006年 菊花賞

■騎乗馬
豊:アドマイヤメイン
幸四郎:ソングオブウインド
G1レースでは初の兄弟による馬券圏内の入線を果たした2001年のエリザベス女王杯。
それ以降、幸四郎騎手は2003年にウインクリューガーでG1・2勝目を挙げ、豊騎手も2005年にディープインパクトで三冠を達成。両者ともに競馬界で存在感を発揮していた。
そして2006年、牡馬クラシックではメイショウサムソンが春の二冠を制し、菊花賞で前年のディープインパクトに続く史上7頭目の牡馬三冠の達成を狙っていた。
武兄弟は挑戦者の鞍上として参戦し、豊騎手が重賞2勝を挙げているアドマイヤメイン、幸四郎騎手が前哨戦の神戸新聞杯で3着となったソングオブウインドに騎乗して本番に臨んだ。
レースはスタートと同時にアドマイヤメインが物凄い勢いで先頭を主張し、後続をグングン引き離す大逃げの体勢に。
スタンド前で後続を10馬身近く引き離すその逃げは、1000m通過が58秒7と明らかに速い。後続馬群で彼を追いかけるものはなく、ソングオブウインドも後方3番手でじっくり構えていた。
だが、1000m地点から2000m地点までのタイムは63秒5。一気にペースを落としながらも先行集団が差を詰めて来ないこの作戦は、横山典弘騎手がセイウンスカイやアドマイヤジャパンでやったものと同じである。
そして勝負所で再びギアを上げたアドマイヤメインは、直線で追いすがるメイショウサムソンを振り払う。
後続各馬も脚色が鈍く、勝負あったかと思われたところに急追したのが横山典弘騎手のドリームパスポートと幸四郎騎手のソングオブウインド。
最後はソングオブウインドが2頭を交わし去り、1998年にセイウンスカイが記録した3分3秒2というタイムを0秒5更新するレコードでG1初制覇を飾った。
加えて、上り3Fは2005年のディープインパクトに次ぐ33秒5。この上り3Fは2025年9月現在でも菊花賞史上2位のものとなっている。
前年、ディープインパクトとアドマイヤジャパンによる名勝負を繰り広げた豊騎手と横山典弘騎手は、そろって次のように語っている。
「去年、相手が感じた気持ちが分かった」「まさか幸四郎がいるなんて」。この時のソングオブウインドと幸四郎騎手の走りは衝撃的だった。



