競馬では「強い馬」や「速い馬」と表現されることがあるが、その二つは似て非なるもの。そこで今回は、「速い馬」に注目したい。G1の大舞台で日本レコードを叩き出した5頭をピックアップ。その歴史的な瞬間を振り返りながら、彼らが残した異次元のスピードを振り返っていく。[4/5ページ]
  
  
④2018年ジャパンカップ(勝ち馬アーモンドアイ)

さらに衝撃的だったのは、2018年のジャパンカップ。この年は、3歳牝馬アーモンドアイに注目が集まっていた。
ジェンティルドンナ以来、史上5頭目の牝馬3冠に輝いたアーモンドアイは、同じくジェンティルドンナ以来、史上2頭目となる3歳牝馬によるジャパンカップ制覇を目指して出走していた。
 単勝1.4倍という圧倒的な支持を集めており、古馬との初対戦にも関わらず、アーモンドアイがどんな勝ち方を見せるかに焦点が集まるレースであった。
  
  
レースは、キセキがハナを切り、ノーブルマーズが2番手を追走。最内枠から好スタートを決めたアーモンドアイは、3番手のインコースを確保する。
キセキの作り出した流れは、前半1000mの通過が59秒9というほぼ平均ペース。アーモンドアイはノーブルマーズとほぼ並んだ2番手のインコースでキセキを追いかけ、先頭と3馬身ほどの差で4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入ってもキセキの逃げ脚は衰えず、追いかけるアーモンドアイも一気に交わす展開とはならない。それでもジリジリと詰め寄り、残り200mを切ったあたりでついに捕えて先頭。
キセキも必死の抵抗を見せるが、それをねじ伏せるように引き離していく。そのまま先頭でゴールしたアーモンドアイ。
 2着にはレースを作ったキセキが粘り込み、そこから3馬身半離れた3着にスワーヴリチャードが入った。
  
  
そしてジャパンカップではお馴染みとなったロンジンの電光掲示板には、2分20秒6という信じられないタイムが表示されていた。
これまでのレコードタイムは、同じくジャパンカップでアルカセットが記録した2分22秒1。それを1秒5も更新した3歳牝馬に、世界が驚愕した。
勝ったアーモンドアイは、牝馬3冠に続いて4つ目のG1タイトルを獲得。その後もG1勝利を積み重ね、芝の日本新記録となる8つ目のG1タイトルを獲得。
そして引退レースとなる2020年のジャパンカップでは、コントレイルとデアリングタクトという、同年の3冠馬と牝馬3冠馬との対決が実現。
この3頭の3冠馬による夢の対決を先輩の意地で制し、9冠を獲得してアーモンドアイはターフを去った。


