競馬では「強い馬」や「速い馬」と表現されることがあるが、その二つは似て非なるもの。そこで今回は、「速い馬」に注目したい。G1の大舞台で日本レコードを叩き出した5頭をピックアップ。その歴史的な瞬間を振り返りながら、彼らが残した異次元のスピードを振り返っていく。[3/5ページ]
③2017年天皇賞(春)(勝ち馬キタサンブラック)

続いて紹介するのは、2017年の天皇賞(春)。このレースは、前年の有馬記念でクビ差の接戦を演じた2頭の再戦に注目が集まっていた。
その有馬記念を制したのは、明け4歳となったサトノダイヤモンド。皐月賞とダービーでは惜敗が続いたが、菊花賞で初のG1タイトルを獲得。勢いそのままに初対戦の古馬勢も撃破し、有馬記念を勝利していた。
その有馬記念で惜しくもクビ差敗れたのが、武豊騎手が騎乗するキタサンブラック。こちらは前走の大阪杯でG1・4勝目を挙げ、天皇賞(春)連覇もかかる一戦。
有馬記念では2キロの斤量差もあって敗れていたが、同じ斤量となった今回は、負けられない一戦であった。
 オッズは、1番人気のキタサンブラックが単勝2.2倍で、2番人気のサトノダイヤモンドが単勝2.5倍。3番人気のシャケトラが単勝9.9倍ということからも、完全な2強対決と見られていた。
  
  
レースは、ヤマカツライデンの大逃げ。キタサンブラックは離れた2番手を追走し、サトノダイヤモンドは中団外めからレースを進めていた。
前半1000mの通過は58秒3というハイペースで通過し、ヤマカツライデンが後続を一時15馬身ほど引き離す。
しかしさすがにリードは一気に詰まってきて、3角ではすでにいっぱいの手ごたえ。代わって、3〜4角の中間あたりで楽な感じでキタサンブラックが先頭へと立つ。
それを見るようにサトノダイヤモンドも好位の外までポジションを上げ、最後の直線へと向かう。
直線に入っても、先頭はキタサンブラック。2番手に上がったシュヴァルグランに、外からサトノダイヤモンド、内からアドマイヤデウスが並びかけようとするが、いずれもキタサンブラックと同じ脚いろで差が詰まらない。
 結局、4角先頭から最後までリードを守り切ったキタサンブラックが勝利。2着には3頭の真ん中で踏ん張り切ったシュヴァルグランが入り、サトノダイヤモンドはクビ差の3着となった。
  
  
そして勝ち時計は、3分12秒5。ディープインパクトの持つレコードタイムを0秒9塗り替える日本レコードを樹立し、見事に連覇を達成した。
キタサンブラックはその後、天皇賞(秋)を制して天皇賞春秋制覇を達成。さらには引退レースの有馬記念も勝利して、G1・7勝目を挙げた。
有終の美を飾ったキタサンブラックは、北島三郎オーナー最後の「まつり」の歌声に見送られ、ターフに別れを告げた。


