競馬では「強い馬」や「速い馬」と表現されることがあるが、その二つは似て非なるもの。そこで今回は、「速い馬」に注目したい。G1の大舞台で日本レコードを叩き出した5頭をピックアップ。その歴史的な瞬間を振り返りながら、彼らが残した異次元のスピードを振り返っていく。[2/5ページ]
②2014年菊花賞(勝ち馬トーホウジャッカル)

次に紹介するのは、2014年の菊花賞。このレースで日本レコードを樹立したのは、デビュー149日での菊花賞制覇という「早い」記録も同時に更新した、トーホウジャッカルであった。
この年の春2冠は上位拮抗で、皐月賞を制したのはイスラボニータ。ダービーでも2着に入り、同世代では頭ひとつ抜け出した存在であったが、セントライト記念快勝後は、天皇賞(秋)参戦を発表。そのため、菊花賞への参戦はなかった。
そうなると、期待は必然的にダービー馬ワンアンドオンリーに集まった。秋初戦の神戸新聞杯も苦しみはしたが勝利で発進し、菊花賞でも1番人気に支持された。
続く2番人気は、皐月賞2着のトゥザワールド。セントライト記念ではイスラボニータに完敗の2着も、イスラボニータ不在の菊花賞であれば、人気を集めるのは当然であった。
そして続く3番人気と4番人気には、神戸新聞杯でワンアンドオンリーに肉薄した、トーホウジャッカルとサウンズオブアースが支持を受けていた。
レースは、サングラスがハナを切り、トーホウジャッカルとトゥザワールドは好位から進める。ワンアンドオンリーとサウンズオブアースは、その後ろの中団グループにポジションを取る展開となった。
レースが動いたのは3角手前。逃げていたサングラスを交わし、シャンパーニュが先頭に立ってペースが上がる。連れてマイネルフロストとトーホウジャッカルが2番手に上がり、その後ろをなぞるように内からサウンズオブアースも浮上。
トゥザワールドとワンアンドオンリーは外を回って前をうかがっていた。そのまま4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入ってすぐ、シャンパーニュを交わしてマイネルフロストが先頭に立つ。しかしそれも束の間、外からトーホウジャッカルがマイネルフロストを交わし、それを目がけて最内からサウンズオブアースが接近。
残り200mからは一騎打ちの様相だったが、迫られてから再びグイッと伸びたトーホウジャッカルが半馬身振り切って勝利。
サウンズオブアースから3馬身半離れた3着にはゴールドアクターが入り、ワンアンドオンリーとトゥザワールドはそれぞれ9着、16着に敗れた。
そして表示された勝ち時計は、3分01秒0。それまで世界レコードとされていたナリタトップロードの3分02秒5を、1秒5も更新する大レコードであった。
勝ったトーホウジャッカルがデビューしたのは、なんと日本ダービーの前日。デビューから149日での菊花賞制覇は、それまでの最短記録を更新。まさに「早くて、速い勝利」であった。


