競馬の魅力のひとつは、どんなにデータを積み上げても「絶対」が存在しないこと。人気馬が順当に勝つこともあれば、ノーマークだった大穴が激走することもある。そんな競馬の神様のいたずらがあるからこそ、多くのファンが魅了されるのだろう。今回は、数あるG1レースの中から「単勝高配当ランキングTOP10」を振り返る。[6/10ページ]
第5位 2012年天皇賞(春)
ビートブラック(単勝159.6倍)

2011年に三冠を達成し、暮れの有馬記念も制したオルフェーヴル。だが、古馬となった初戦の阪神大賞典では3コーナーを曲がらない大逸走を見せ、まさかの2着に敗れた。
それでも通常の馬なら巻き返すことすら難しいロスを喰いながら勝ち馬に迫った実力に評価が下がることはなく、この天皇賞(春)でも1.3倍の1番人気に推されていた。
2番人気のウインバリアシオンでも9.8倍、3番人気以下は全て10倍以上というオッズからも、このレースはオルフェーヴルの独壇場と見ていた人は多かったはずだ。
だが、断然人気の馬がいる時、いつだって波乱を起こすのは逃げ馬である。
ゲートが開くとビートブラック、ナムラクレセント、ゴールデンハインドといった3頭が逃げの手を打つ。
このうちナムラクレセント先頭争いには参加せず3番手から進めたが、ゴールデンハインドとビートブラックは1コーナーに飛び込んでいく際、さらに加速。2頭で4番手を20馬身近く離す大逃げを打った。
2周目の坂の上りでゴールデンハインドは苦しくなったが、ビートブラックにはまだ余裕があった。
直線に向いてきたとき、3番手集団とは10馬身以上、オルフェーヴルとは15馬身以上の差。場内実況の中野アナウンサーも「これは届かない!」と実況するほどの展開に持ち込んだビートブラックは、そのまま先頭でゴールイン。
人馬共にG1初制覇となった。この時の単勝の払戻金額1万5960円は、2025年現在でも破られていないレース史上1位の単勝配当である。


