競馬の魅力のひとつは、どんなにデータを積み上げても「絶対」が存在しないこと。人気馬が順当に勝つこともあれば、ノーマークだった大穴が激走することもある。そんな競馬の神様のいたずらがあるからこそ、多くのファンが魅了されるのだろう。今回は、数あるG1レースの中から「単勝高配当ランキングTOP10」を振り返る。[2/10ページ]
第9位 1992年エリザベス女王杯
タケノベルベット(単勝91.3倍)

この配当を記録したエリザベス女王杯の時点で、タケノベルベットの戦績は6戦3勝。
春のチューリップ賞では、同年のオークス馬アドラーブル、桜花賞馬ニシノフラワーに続く3着という実績を残していた。
しかし、このレースでは18頭立て17番人気という低評価。当時より情報が多く取得できる近年の競馬であれば、間違いなくもう少し人気になっていただろう。
スタートからタケノベルベットは後方集団に構えたが、淀の下り坂でひとまくり。一気に先頭集団へ並んできた。
その勢いのまま直線入り口で先頭に立ったが、追い出すライバルたちを尻目に馬なりのまま抜け出す。
残り200mでGOサインが出ると一気に伸び、2着のメジロカンムリに3と1/2馬身差をつける完勝。単勝91倍の低評価を嘲笑うかのような伸び脚だった。
鞍上の藤田伸二騎手はこれがG1初制覇。弱冠2年目の若手とは思えない思い切りの良さが光る名騎乗だった。
その後タケノベルベットは、次走の鳴尾記念でも牡馬を相手に勝利を収めた。
翌年の阪神大賞典では前年の春秋グランプリホースのメジロパーマーにコンマ1秒差まで迫る激走を見せ、エリザベス女王杯がフロックではないことを証明して見せた。


