⑤クロワデュノール
今年のダービー馬・クロワデュノール。先日、凱旋門賞に挑戦した同馬だが、帰国後に有馬記念へ出走するかどうかは現時点では不透明だ。ただ、もし参戦が実現すれば、有力馬の一頭となることは間違いないだろう。
その年のダービー馬が有馬記念に挑戦することは珍しくないが、三冠馬以外で勝利を挙げたのは1986年のダイナガリバーのみ。仮にクロワデュノールが有馬記念を勝利した場合、39年ぶりの快挙となる。
だが、この馬ならそんな記録すら簡単に達成してしまうかもしれない。なぜなら、同じ中山競馬場で行われた皐月賞の走りがかなり優秀だったからである。
1000m通過が59.3秒と速めな上、途中で捲ったファウストラーゼンとアロヒアリイの動きによってかなり締まったレースラップになった今年の皐月賞。
クロワデュノールは先行集団の4番手に位置していたが、この流れで馬群に動きがあった際、周囲の馬に何度も接触する不利も被っていた。しかも通過ラップはハイペース。
肉体、精神どちらにも負荷がかかっていたといっていい。にもかかわらず、直線に向いてクロワデュノールは楽に抜け出した。
結果的に坂を上ったところでミュージアムマイルに捕まってしまったが、追い込んできたマスカレードボールには抜かせなかった。このレースで先行した馬のうち、掲示板どころか一桁着順になったのはクロワデュノールのみという結果が、彼の強さをより際立たせているだろう。
事実、番手からスムーズな競馬をできた日本ダービーでは、好位から抜け出して後続を封じ込める横綱相撲で勝利し、世代の頂点に立っている。
器用で素直、それでいてスター性も秘めている3歳馬。1年の総決算である有馬記念を勝つのは、こういう馬こそ相応しいのかもしれない。
これまで凱旋門賞から転戦してきた馬の成績は【1-2-2-7】で、勝利したのは2013年のオルフェーヴルのみ。加えて、3歳馬の参戦はゼロという、あまりプラスには働かないデータだ。
それでもクロワデュノールなら、不利なデータなど打ち破る競馬で1年を締め括ってくれる予感は十分にある。
【了】
(文●小早川涼風)
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