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【藤沢和雄元調教師の天皇賞(秋) 制覇 5選】藤沢イズムで秋盾6勝!馬を愛し、馬に愛された“名伯楽”

text by 中西友馬

今でこそ、天皇賞(秋)に挑戦する3歳馬も一般的となったが、以前は3歳牡馬世代トップクラスの秋の目標といえば、問答無用で菊花賞であった。その潮流に一石を投じたのが、3歳馬で史上初めて天皇賞(秋)を勝利したバブルガムフェローを管理していた藤沢和雄元調教師である。3歳馬だけでなく、古馬を含めても天皇賞(秋)に滅法強いイメージがあり、実際に6勝(5頭)を挙げている。そこで今回は、天皇賞(秋)を制した藤沢和雄元調教師の管理馬をプレイバック。5頭を順に振り返っていく。

1996年天皇賞(秋)を制した時のバブルガムフェロー
1996年天皇賞(秋)を制した時のバブルガムフェロー

①バブルガムフェロー(1996年)

 最初に紹介するのは、藤沢師の天皇賞(秋)初制覇となった1996年。この年は、非常に豪華なメンバーによる一戦となった。

 1番人気に支持されたのは、6歳(現5歳)のサクラローレル。1年以上の長期休養明けから重賞3連勝で挑んできたサクラローレルは、同年の天皇賞(春)も制覇。天皇賞春秋制覇のかかる一戦となっていた。

 2番人気は5歳(現4歳)のマーベラスサンデー。こちらはここまで9戦8勝。G1初挑戦であり、実績的には少し見劣ってはいたが、現在6連勝中と勢いは一番であった。

 そして、3番人気は藤沢厩舎が管理する4歳(現3歳)のバブルガムフェローであった。3歳(現2歳)時に、朝日杯3歳S(現朝日杯FS)を制した素質馬であったが、皐月賞目前で骨折。春のクラシックには出走できなかったが、復帰戦となった天皇賞(秋)前哨戦の毎日王冠では、古馬勢相手に3着と健闘していた。

 続く4番人気は、5歳(現4歳)のマヤノトップガン。菊花賞、有馬記念、宝塚記念と3つのG1タイトルを獲得しており、実績は断然。しかし、直前のオールカマーでサクラローレルに完敗しての4着ということで、4番人気に甘んじていた。
この上位4頭までが単勝10倍を切る人気に推され、発走を迎えた。

 レースは、トウカイタローがハナを切り、カネツクロスが2番手を追走。その後ろがバブルガムフェローとなり、有力馬の中では一番前の位置どり。その後ろにマヤノトップガンがつけて、マーベラスサンデーは中団から。サクラローレルは後方で脚をためる展開となった。前半1000mの通過は60秒3というゆったりとしたペースで進み、4角を回って最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、逃げるトウカイタローにカネツクロスが2番手から並びかける。しかし、その外へと出したバブルガムフェローとマヤノトップガンが一気に交わし、さらにその外からマーベラスサンデーも追い込んでくる。

 サクラローレルも一緒に伸びてきたが、外をマーベラスサンデーにブロックされ、進路を確保できずに苦しい形。人気4頭による叩き合いとなった争いは、ラストでもうひと伸びを見せたバブルガムフェローが勝利した。

 最後に力尽きたマヤノトップガンが半馬身差の2着。最後は4頭の最内を突いたサクラローレルがクビ差の3着に続き、マーベラスサンデーはさらにアタマ差の4着となった。

 激戦を制したバブルガムフェローは、戦後初となる、4歳(現3歳)馬による天皇賞(秋)制覇を達成。管理する藤沢師にとっても、初の天皇賞制覇となった。

 バブルガムフェロー自身はその後G1タイトルには縁がなかったが、敗れた2,3,4着馬はいずれもその後にG1を優勝。非常にハイレベルなメンバーの集まった一戦であった。

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