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【天皇賞(秋)に挑んだ3歳馬の名勝負 5選】混ぜるなキケン…?秋競馬の醍醐味を堪能せよ!

text by 小早川涼風

旧レース名時代から数えて約90年の歴史を誇る天皇賞(秋)。近年では3歳馬の挑戦も増え、グレード制導入以降は、延べ39頭が出走し、4頭が勝利を挙げている。3歳馬と古馬の実力馬たちが激突するこの舞台では、数々の名勝負が生まれてきた。本稿は、そんな3歳馬が挑んだ天皇賞(秋)から、特に印象的な5つの年を振り返る。

1996年天皇賞(秋)を制した時のバブルガムフェロー
1996年天皇賞(秋)を制した時のバブルガムフェロー

①1996年 天皇賞(秋)

【出走した3歳馬】
バブルガムフェロー:1着

 近年の競馬では「古馬vs3歳馬」という構図が定着しつつある天皇賞(秋)だが、1996年当時はまだ古馬中距離の最強決定戦という立ち位置だった。

 3歳馬は菊花賞に進み、クラシックのラスト一冠を競うというのが王道路線の中、そんな常識を打ち破ったのがバブルガムフェローである。

 前年の朝日杯3歳ステークスを勝利しながら、クラシックは怪我に泣かされ回避せざるを得なかったバブルガムフェロー。

 しかし、復帰初戦の毎日王冠でUAEのアヌスミラビリスの3着に好走したこともあり、レース当日の人気は3番人気まで上昇した。

 前年のグランプリホースであるマヤノトップガンを抑え、サクラローレル、マーベラスサンデーといった強豪に次ぐ評価を受けていたのだから、その期待はかなりのものだった。

 もちろん初の古馬混合G1、それも天皇賞(秋)という大舞台で本来の走りができるかという疑念を抱くファンもいた。

 加えて鞍上は前走まで手綱を取った岡部幸雄騎手から、この時点ではG1未勝利の蛯名正義騎手に乗り替わり。強敵揃いのこの舞台で、テン乗りの蛯名騎手が上手く導けるのかという不安も多かっただろう。

 しかし藤沢師は、バブルガムフェローには当時の厩舎の看板馬であるタイキブリザードに匹敵する素質があると判断していた。そのため、相手が古馬の強豪であっても好勝負できると踏んでいたのである。

 そしてその見立ては的中した。バブルガムフェローはスタートからスムーズに好位を確保し、直線では坂下で先頭に立つと、並みいる強豪を退けて見事に1着でゴールした。

 グレード制導入以降、史上初となる4歳(旧齢)馬による天皇賞(秋)制覇を成し遂げ、鞍上の蛯名騎手にも初のG1タイトルをプレゼントしてみせた。

 この勝利が天皇賞(秋)の初勝利となった藤沢和雄師は、以降引退までに同レースを5勝し、2025年10月現在で調教師としてはレース史上最多の6勝を記録している。

 師が切り開いた3歳での天皇賞(秋)挑戦も、現代では珍しいものではなくなった。先見の明で競馬の常識を覆した人馬の挑戦は、その後を歩む競馬人たちの考えに大きく影響を与えたのではないだろうか。

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