⑤ドゥラメンテ(2015年)
「荒々しく、はっきりと」という音楽用語から馬名が取られたドゥラメンテ。デビュー戦から出遅れ、2戦目は枠内で立ち上がる気の悪さを見せながら、レースではその影響を全く感じさせない豪脚で追い込んでくる。それは一冠目の皐月賞でも同じだった。
道中は後方にいたドゥラメンテだったが、4コーナーでまるで車のドリフトのように急旋回し、そこから一気に加速。瞬く間に前を行く馬たちを捉え、最後は2着のリアルスティールを1と1/2馬身突き放して勝ち切った。
その上り3F・33秒9は、2025年9月現在レース史上2位タイで、勝ち馬としては単独1位。これを上回ったのは2022年に3着となったドウデュースのみというところからも、この馬の凄さが分かるだろう。
そしてその衝撃は、二冠目となる日本ダービーでも続いた。スタートをすんなり出て、いつも通り中団の定位置から進めると、直線は外から先頭に立って勝利。前走で見せた荒々しさは鳴りを潜めたものの、さらに強さが増した内容であった。
勝ちタイムの2分23秒1は、当時のダービーレコードを0秒1更新する時計。ディープインパクトやキングカメハメハが記録していたタイムを上回る速さでの二冠達成に、「三冠は当確」という声も多かった。
しかし、この後に骨折が判明。翌年に復帰した後も強さは健在だったが、再度のG1制覇は叶わなかった。種牡馬入り後も急性大腸炎を発症し早逝。子どもたちは僅か5世代のみのとなってしまった。残された産駒からは、リバティアイランドやスターズオンアースなどの名馬が誕生している。
ドゥラメンテ自身が出走できなかった菊花賞も、2025年9月現在でタイトルホルダーとドゥレッツァで2勝を挙げ、夢の続きを叶えた。短い生涯で競馬界を沸かせた彼の蹄跡は、競馬界にしっかりと刻み込まれている。
【了】
(文●小早川涼風)
【関連記事】
・【天皇賞春秋制覇を成し遂げた馬 5選】どんな舞台でも勝ち切る…条件を問わない真の“絶対王者”たち
・【東京競馬場を支配した“府中の鬼” 5選】ヒーローの証明――数々のドラマを演出した長い直線の戦い
・【史上最強の菊花賞馬 5選】この強さ、ヤバい…クラシック最終戦を制した“本当に強い馬”は誰だ?