⑤キタサンブラック(2017年)
最後に紹介するのは、2025年時点で一番直近の天皇賞春秋制覇達成馬となる、キタサンブラック。達成をしたタイミングは、4頭目のメイショウサムソンの達成から10年が経った、2017年であった。
この馬がほかの4頭と違う点は、ほか4頭が4歳(旧5歳)時の達成であったのに対して、キタサンブラックは5歳時の達成であるという点。そのため、2017年の天皇賞(春)の時点で、すでに古馬中長距離路線の中心であった。
ただ、前年の有馬記念では1歳下のサトノダイヤモンドに敗れて2着。天皇賞(春)では、そのサトノダイヤモンドとの再戦という形でもあった。
レースは、前半1000m通過が58秒3というハイペースで進む中、最後は究極のスタミナ比べ。2番手から抜け出して押し切ったキタサンブラックが、3分12秒5という日本レコードを樹立して勝利した。
サトノダイヤモンドとの「現役最強馬対決」と呼ばれた争いを制したが、続く宝塚記念ではまさかの9着大敗。半信半疑の部分もある中、ぶっつけで天皇賞(秋)へと出走した。
レース当日は、降り続く雨によって不良馬場。そして逃げ・先行馬にとって痛恨の出遅れ。中団後方寄りのインコースからの競馬を余儀なくされた。
しかし、ここからが武豊が名手と言われる所以。より水を含んでいると判断して内側をあけて走る馬がほとんどの中、その内ラチ沿いをスルスルと浮上して、気付いたら4角ではすでに2番手。
さらには4角のコーナーワークで先頭へと立つと、直線では馬場の真ん中へと持ち出して、宝塚記念覇者サトノクラウンの追撃をクビ差で凌ぎ切った。
無尽蔵のスタミナを持ちながら、天皇賞(秋)や大阪杯など、中距離G1を勝利するスピードも持ち合わせた名馬であった。
今回紹介した5頭以外には、1989年の天皇賞(秋)と1990年の天皇賞(春)を制したスーパークリークがいる。
また、同一年による天皇賞春秋制覇を達成した年を順に並べると、1988年→1999年→2000年→2007年→2017年。80年代、90年代、00年代、10年代にそれぞれ達成馬がいることを考えると、5年以内に再び達成馬が現れるかもしれない。
【了】
(文●中西友馬)
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