⑤2021年(勝ち馬タイトルホルダー)
最後に紹介するのは、2021年の菊花賞。この年は京都競馬場の改修工事の影響により、1979年以来、実に42年ぶりとなる阪神競馬場での開催となった。
さらには、皐月賞馬とダービー馬が出走を見送って不在。そんな混沌としたレースを制したのは、他馬に影をも踏ませぬ走りで圧倒した、タイトルホルダーであった。
この年のクラシック路線で最初に脚光を浴びたのは、エフフォーリア。4戦4勝と無敗で皐月賞を制覇し、一気にこの世代の主役に名乗りを挙げた。
しかし、断然人気で迎えたダービーではハナ差の2着に惜敗。エフフォーリアを倒してダービー馬に輝いたのは、シャフリヤールであった。
そんなエフフォーリアは、秋の大目標を天皇賞(秋)とし、シャフリヤールはジャパンカップと発表。ともに菊花賞へは出走しないこととなった。
そして迎えた菊花賞。1番人気と2番人気は、神戸新聞杯でワンツーだったステラヴェローチェとレッドジェネシス。中でも、川田騎手とコンビ復活のレッドジェネシスが1番人気となった。
3番人気と4番人気はセントライト記念勢。長休明けながら3着に入ったオーソクレースが3番人気、1番人気を裏切る形となったタイトルホルダーが4番人気となり、ここまでが単勝10倍を切っていた。
レースは、最内枠からワールドリバイバルが行く素振りを見せるが、セントライト記念で番手に収まり大敗したタイトルホルダーが、気合いをつけてハナを切る。
オーソクレースは中団やや後ろからの競馬となり、ステラヴェローチェとレッドジェネシスは、ともに後方集団で脚をためていた。
逃げるタイトルホルダーは、最初の1000mを60秒0で通過すると、次の1000mを65秒4とグッとペースを落とし、後続を引きつける。
4角では2番手以降の手ごたえが怪しくなる中、タイトルホルダー鞍上の横山武史騎手だけは抜群の手ごたえで、最後の直線へと向かう。
直線に入って追い出されると、タイトルホルダーは一度引きつけた差をまた広げ始め、焦点は2着争いとなる。
最後まで脚いろの衰えなかったタイトルホルダーは、激しい2着争いを尻目に、5馬身差の圧勝。2着には中団から脚を使ったオーソクレースが入り、牝馬のディヴァインラヴが3着となった。
セイウンスカイ以来、23年ぶりとなる菊花賞の逃げ切り勝ちを達成したタイトルホルダーの背中には、セイウンスカイの鞍上であった横山典弘騎手の息子である、横山武史騎手の姿があった。
今回は菊花賞での強さだけにフォーカスしたため、5頭のうち三冠馬はナリタブライアンだけという選出になった。
ただ、完璧に乗ったアドマイヤジャパンをあっさり交わしたディープインパクト、引っ掛かりながらも突き抜けたオルフェーヴル、明らかに不向きな3000mでも堪え切ったコントレイルなど、三冠馬たちの菊花賞もまた、強さを感じるレースであった。
【了】
(文●中西友馬)
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