ヴァーミリアン ~G1級9勝。ダート戦国時代を生き抜いた朱色の英雄~
ヴァーミリアン(Vermilion)
ダート界の絶対王者として一時代を築いたヴァーミリアン。芝からダートに戦いの場を変えると、一気に素質が開花。キャリア34戦のうち、G1/Jpn1級を9勝し、7年連続で重賞制覇の偉業を達成した。偉大な父・エルコンドルパサーの最高傑作とも称される。
プロフィール
性別 | 牡馬 | |
父 | エルコンドルパサー | |
母 | スカーレットレディ | |
生年月日 | 2002年4月10日 | |
馬主 | サンデーレーシング | |
調教師 | 石坂正 | |
生産者 | ノーザンファーム | |
通算成績 | 34戦15勝【15-5-1-13】 | |
獲得賞金 | 11億3285万9000円 | |
主な勝ち鞍 |
2007, 2008, 2009年 JBCクラシック 2007年 ジャパンカップダート 2008年 フェブラリーステークス |
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受賞歴 | 2007年 JRA賞最優秀ダートホース | |
産駒成績 | 産駒デビュー年:2014年 | |
通算重賞勝利数:1勝 | ||
通算G1勝利数:0勝 | ||
代表産駒 | リュウノユキナ(2021年、2023年 東京スプリント競走) |
~ダートで一時代を築いた英雄~
ヴァーミリアンとは英語で朱色という意味であり、母のスカーレットレディから着想を得たものである。早逝したエルコンドルパサーが残した大物で、ダート界に一時代を築いた。
デビューから3歳秋までは芝のレースで戦った。デビュー戦は、上がり33.8秒の脚を使い、他馬を寄せつけず圧勝した。その後、連続2着となって迎えた四戦目に、初の重賞チャレンジとなる、ラジオたんぱ杯2歳Sに出走する。後に重賞を勝つアドマイヤジャパンやローゼンクロイツが出走していたが、先行から見事に押し切り勝利し、素質の高さを証明した。
ここまでは順調でクラシックの有力候補としても名を連ねたが、年明けから大スランプにおちいる。フジTVスプリングステークスでは2番人気ながら14着、皐月賞では怪物ディープインパクトの遥か後方の12着、その後も2桁着順を連発する。
陣営は芝から離れ、半兄サカラートが結果を残していたダートに挑戦することにした。ここから主戦騎手も武豊に戻り、彼の運命は変わっていく。
初戦はハナ差ながら競り勝ち、続く地方重賞の彩の国浦和記念でも3馬身差をつけて勝利。ダート重賞を制覇し、翌年の期待感を持たせながら3歳シーズンを終える。
4歳の初戦は平安Sで2着になり、本番のフェブラリーステークスを迎える。当時ダート界の頂点に君臨していたカネヒキリも出走するため、武豊はカネヒキリを選択した。レースでは直線で一気に加速していくカネヒキリに全く付いていけず、0.9秒差の5着におわった。
その後、レース中に心房細動を発症しするアクシデントがあったが、休養明けのジャパンカップダートでは4着となった。翌年こそ飛躍の年になることを夢見ながら、次の年を迎える。
5歳になり、JpnIの川崎記念に1番人気で出走する。先行でレースを進め、6馬身差で圧勝した。続いて目標であったドバイワールドカップへ。世界の強豪相手に4着と健闘し、帰国後は休養に入る。
休み明け、7か月ぶりのレースとなったのはJBCクラシック競走(JpnI)。もはやJpnⅠはヴァーミリアンにとっては通過点だ。4馬身差の圧勝で、ジャパンカップダートへ向かう。
前年は9番人気で4着であったが、今回は堂々と1番人気での出走となった。後方からレースを進め、第四コーナーで外に持ち出して直線で加速。上り最速の脚で圧巻の勝利をあげた。そして、年末のダートの祭典である東京大賞典競走へ。不良馬場などなんのその、単勝1.3倍の人気に応える4馬身差の圧勝で充実の5歳シーズンを終えた。
6歳になり、フェブラリーSで勝利すると、もはや国内では無双状態に入る。狙うは海外制覇。再び異国の地、ドバイワールドカップに出走するが、12着と惨敗してしまう。
帰国後は再び休養に入る。復帰戦は同じくJBCクラシックを勝ったが、続くジャパンカップダートで休養していた絶対王者、カネヒキリと激突する。国内では無双状態であったはずのヴァーミリアンが、ジャパンカップダート、東京大賞典競走と着差は僅かであるが、カネヒキリに敗れてしまった。ヴァーミリアンもいよいよ落日の時か。
しかし、まだ終わらない。フェブラリーSは5着に敗れたが、帝王賞競走では久しぶりの勝利。続く、JBCクラシックでも勝利し、同一競走三連覇の偉業を達成する。
8歳となった翌年も現役を続行し、川崎記念を勝利。GI級9勝、2歳から8歳まで7年連続重賞勝利という凄まじい記録を樹立した。
引退後は社台スタリオンステーションで種牡馬入り。初年度から216頭に種付けされるなど、エルコンドルパサーの血を継ぐものとして期待されていた。しかし、ブリーダーズ・スタリオン・ステーションへの移動もあり、思うような結果を残すことができなかった。
現在はノーザンホースパークで暮らしている。一般人でも乗馬が可能なので、名馬の背中を感じられる又と無い機会となっている。彼の背中を感じながら、長い現役生活をねぎらってあげてほしい。偉大な記録を残した朱色の英雄として。
【了】
(文●沼崎英人)
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