⑤メイショウタバル
最後に紹介するのは、現役馬のメイショウタバル。父は芦毛の怪物ゴールドシップ、母は松本オーナー所有でダート2勝のメイショウツバクロという血統のメイショウタバル。
現時点での戦績が【5-0-0-6】なのを見ても分かるように、勝つときはべらぼうに強く、負けるときはアッサリと負ける。そんなハッキリとした馬である。
初勝利は、デビュー3戦目の2歳未勝利。意外にも、初勝利は中団からの差し切り勝ちであった。そして2勝目は、1勝クラスのつばき賞。ハナを切ったかと思ったら絡まれる出入りの激しい苦しい競馬ながら、4角で先頭に立って押し切ってみせた。
そしてメイショウタバルの名を、一躍世間に知らしめることとなったのが、3勝目の毎日杯。雨が残って重馬場で行われた一戦で主導権を握り、直線では後続を引き離す一方。2着馬のノーブルロジャーに6馬身差をつけ、圧勝でG1初制覇を飾った。
4勝目はさらに大逃げを打ち、そのセーフティーリードを守り切った神戸新聞杯。このあたりでは、肉を切らせて骨を断つスタイルの逃げを、得意パターンとして完全に確立させていった。
しかしそれは諸刃の剣となり、日経新春杯では前半の1600m通過が1分32秒4という、マイルG1並のペースで突っ込んで失速。今年のドバイターフからは、武豊騎手とのコンビ結成となった。
そして迎えた、記憶に新しい今年の宝塚記念。絶妙な逃げでマイペースに持ち込んだ武豊騎手とメイショウタバルのコンビは、早めに捕まえにきたベラジオオペラを突き離して3馬身差の快勝。7番人気という伏兵評価を覆して、見事にG1初制覇を飾った。
父ゴールドシップとの父仔制覇でもあるこの勝利は、松本オーナーにとってメイショウマンボのエリザベス女王杯以来、10年以上ぶりのJRA平地G1制覇であった。
今後どのようなローテーションを進むのかまだ分からないが、どのレースに出走するとしても、展開面の鍵を握る重要な1頭となることは間違いない。
このように、半世紀に渡る馬主生活の中で、さまざまな活躍馬を輩出してきた松本オーナー。
今回紹介した馬のほかにも、「小倉3冠」を達成したメイショウカイドウなど、小倉にゆかりのある活躍馬も印象的である。
「なんとか松本オーナーに2000勝を」と周りの厩舎関係者が尽力したのも、松本オーナーの人望によるもので、競馬人として本当に素晴らしい人物であった。
【了】
(文●中西友馬)
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