⑤レイデオロ
最後に紹介するのは、ダービー馬レイデオロ。デビューから無傷の3連勝でホープフルSを制覇し、G1初制覇。普通に考えれば牡馬クラシックの中心であるはずなのだが、一頓挫あって直行となった皐月賞では、まさかの5番人気。
この年は牡馬のレベルが低いと言われ、朝日杯FSの1番人気は牝馬のミスエルテ。皐月賞の1番人気も、牝馬のファンディーナに譲っていた。そんな皐月賞を制したのは、伏兵アルアイン。レイデオロは5着に敗れ、初黒星を喫した。
しかし、大目標はあくまでダービー。その思いがファンに伝わっていたのか、ダービーでは皐月賞5着ながら皐月賞組の中で人気最上位である2番人気(単勝オッズ5.3倍)に推された。しかし、ここでも皐月賞組への評価が低く、1番人気(単勝オッズ3.4倍)は別路線組のアドミラブルに譲っていた。
レースは、マイスタイルの逃げで前半1000m通過が63秒2という、ダービー史に残るほどの超スローペース。序盤は後方に構えていたレイデオロだったが、ペースが遅いと判断した鞍上ルメールは、東京競馬場ではなかなか見られない「まくり」を打つ。
向正面で一気にポジションを上げると、逃げるマイスタイルの直後に収まる。この競馬でピタッと折り合わせるのだから、さすが名手ルメールといったところ。2番手にハマれば、あとは直線できっちりと前を交わすだけで、スワーヴリチャードやアドミラブルの追撃を振り切って勝利した。
この勝利は、厩舎開業30年目の名伯楽である藤沢和雄調教師にとっても、名手ルメール騎手にとっても、悲願のダービー初制覇であった。
レイデオロはその後、その翌年の天皇賞(秋)を制してG1・2勝目をあげ、種牡馬入りを果たす。
いまだG1馬は輩出できていないが、今年に入ってから、サンライズアースが阪神大賞典を制して重賞初勝利。それに続くようにトロヴァトーレがダービー卿CTを勝ち、さらにはアドマイヤテラが目黒記念を勝利した。
今年に入ってからの好調さには目を見張るものがあり、秋のG1戦線では勢いそのままに、産駒G1初制覇を見ることができるかもしれない。
自身が変則2冠を達成したのと同じように、産駒もオールマイティーな活躍を見せているキングカメハメハ。
今回は後継馬候補に注目したが、産駒は牡馬・牝馬ともに活躍馬が数多く、キンカメの血は後世に脈々と受け継がれていくことだろう。
【了】
(文●中西友馬)
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