⑤リスグラシュー
最後に紹介するのは、リスグラシュー。この馬に関しては、2歳時から牝馬の中では世代トップクラス。デビュー2戦目の未勝利戦でレコード勝ちを果たし、阪神JFではソウルスターリングの2着。翌年の牝馬三冠戦でも、2、5、2着と常に上位争いを繰り広げた。
しかし古馬になってからも、ヴィクトリアマイルでハナ差2着など、なかなかG1タイトルに縁がなかったリスグラシュー。ようやくG1初制覇を飾ったのは、モレイラ騎手との初コンビで挑んだ4歳秋のエリザベス女王杯であった。
「2歳時から素質の片鱗を見せていたリスグラシューが、悲願のG1初制覇!」並の馬ならそうであろうが、これはリスグラシューの「覚醒」最終形態ではなかった。
エリザベス女王杯を勝利した後は、香港ヴァーズ2着、金鯱賞2着、クイーンエリザベス2世C3着と、牡馬相手に善戦を続けたリスグラシュー。そしてついに、「覚醒」最終形態を迎える時が来る。
そのトリガーを引いたのは、宝塚記念で初コンビを組んだ、D.レーン騎手であった。
宝塚記念では、リスグラシューは3馬身差の完勝。さらには、秋のコックスプレートも勝利。そして引退レースとなった有馬記念には、特例適用によって騎乗可能となったレーン騎手とのコンビで出走。人気の中心はひと学年下のアーモンドアイで、断然の1番人気(単勝オッズ1.5倍)に推されていた。
しかし、リスグラシューとレーン騎手のコンビは、終始距離ロスのないラチ沿い追走から、直線では馬群の大外へとワープする異次元の進路取りを見せて突き抜け、5馬身差の圧勝。見事に有終の美を飾った。
レーン騎手とのコンビで完全「覚醒」を果たしたリスグラシュー。有馬記念のあまりの強さに引退を惜しむ声は多かったが、絶頂期のままターフを去っていった。
「覚醒」というのは、もちろん早熟ではないが、晩成ともまた違う。なにかのキッカケで見違えるような強さを見せる馬がいることも、また競馬の面白さである。
【了】
(文●中西友馬)
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