④モーリス
続いて紹介するのは、モーリス。2歳時に2勝を挙げてオープン入りするも、3歳春は重賞で結果を出すことができず、背腰に痛みが出たことで長期休養。この休養期間に、心機一転、美浦の堀宣行厩舎へと転厩することとなった。
7ヶ月の休養を経て、万全の態勢となったモーリスは、4歳シーズンを迎えて快進撃。条件戦から3連勝でダービー卿CTを勝利し、重賞初制覇。さらには、G1初制覇となった安田記念を皮切りに、マイルCS、香港マイルと国内外のG1で3連勝を飾った。
1月には1000万下(現2勝クラス)だった馬が、破竹の6連勝で同年の12月には海外G1を制覇。牡馬ではあるが、「シンデレラストーリー」という表現がしっくりくるほどの勢いでマイル界の頂点まで駆け上がり、さらには短距離馬として史上3頭目となる、年度代表馬にも輝いた。
翌年もモーリスの勢いは止まらず、香港のチャンピオンズマイルでG1・4勝目を挙げると、秋には中距離路線へと距離を延長。2000mの天皇賞(秋)と香港カップを制し、最終的にG1・6勝を挙げた。
4歳以降は【9-2-0-0】というパーフェクトに近い戦績を残し、特に香港では3戦3勝と無類の強さを残したモーリス。
転厩にばかりフォーカスが当てられるが、成長期と転厩のタイミングが重なったものであることは明らか。
しかしモーリスの「覚醒」を引き出したのは、背腰の不安をじっくり休ませて立て直した、堀調教師のファインプレーであるのもまた、確かであった。