⑤2019年東京大賞典(オメガパフューム)
JRA所属騎手として7年目となった2021年。デムーロ騎手はダートグレード競走で存在感を示し、2018年から2020年の東京大賞典を3連覇したオメガパフュームの主戦となっていた。
他にも、ラヴズオンリーユーやラッキーライラックなどとのコンビでG1を制してはいたが、この時期のデムーロ騎手の相棒と言えばオメガパフュームを思い出すファンも多いのではないだろうか。
そして6歳となったこの年も、秋の最大目標は東京大賞典に設定。金沢で行われたJBCクラシックを2着とし、暮れの大井に4年連続で姿を現した。
ややゆっくりとゲートを出たオメガパフュームだったが、慌てることなくいつも通り中団から。向こう正面からじわじわと動いていくと、前走で後塵を拝したミューチャリーを真後ろでマーク。
だが直線入り口で両馬は接触し、オメガパフュームは外に振られた。しかしそれで挫けることなく、もう一度内に切れ込みながら先頭に立つ。
間を置かず今度は内からクリンチャー、アナザートゥルースが追撃してくるが、最後までオメガパフュームの脚色が鈍ることはなく、クリンチャーを1/2馬身競り落として4連覇のゴールへ飛び込んだ。
そしてゴールの瞬間、デムーロ騎手は両手を広げていたが、それはいつものように腕を広げるだけではない。両手で何度もガッツポーズを繰り返す、歓喜のゴールインだった。
「怒られるのは分かっていたけど、同じ競走を同じ馬で、しかも4連続で勝つなんて奇跡みたいなことだから、やらないわけにはいかなかった」とデムーロ騎手は後にコメントしている。
そして同騎手は予想通り、レース後にはJRA・NARの両方から厳重注意を受けた。「今度やったら騎乗停止になる可能性があるから、もう絶対にできない」と苦笑いしながら当時を振り返っているデムーロ騎手。
その話が本当なら、これが最後の飛行機ポーズになるのだろう。それでも、日本競馬史上初となる「同一平地G1・4連覇」という歴史的快挙の場で披露したこのポーズは、最高の「ラストフライト」と呼べるかもしれない。
【了】
(文●小早川涼風)
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